Case Studies
データセンターNW更改
複雑なルーティング設計と制御手法を確立

Case Studies
複雑なルーティング設計と制御手法を確立

高度かつ複雑なルーティング設計が求められる 新旧データセンター接続と更改を実現
InfiniCoreはお客様の既存環境における課題を可視化し、 特定した課題に対して最適なソリューションを提供します。
Goal
・新規拠点向けにクラウド環境を構築
・既存専用線接続を活用した拠点接続
既存データセンター(DC)の老朽化への根本的な対応と、それに伴う運用リスクの抜本的な解消です。長年運用してきたデータセンターでは、ネットワーク機器やサーバ機器の経年劣化が目立ち始め、故障率や障害頻度の増加、保守部品の調達難、サポートの打ち切りなど、安定運用に関わるさまざまな課題が顕在化していました。さらに、新たに求められるセキュリティ対策や拡張性の高いシステム運用、法令遵守(コンプライアンス)を強化する観点からも、既存DCのままでは安全・安定・効率の面で限界が訪れていたのです。これらを背景に、将来の事業展開を見据えたIT基盤の再構築、すなわち新DCへの移行は避けて通れない経営的な意思決定となっていました。
しかしながら、単純な設備入れ替えでは解決しきれない課題が多数存在していました。既存DCには多様なシステムやサービスが集約されており、これらを新DCへ一括で移行することは極めて難易度が高いだけでなく、事業への重大な影響を及ぼす可能性があります。そこで、お客様は「新旧DC間を高度に接続したハイブリッド運用期間を設け、サービスを止めずに段階的かつ安全に新DCへ移行させる」という戦略を選択しました。このアプローチを実現するためには、新旧DC間のトラフィックを最適に制御し、ネットワーク障害や遅延を防ぎつつ、既存システム・新システム双方の連携を支える複雑で緻密なルーティング設計が求められました。例えば、既存DCの業務系システムは一部だけ新DCに先行移行し、社内外のアクセス元との通信ルートを柔軟に振り分ける必要が生じました。また、バックアップやデータレプリケーションを両DC間で同時に運用し、データ整合性と可用性を維持する取り組みも不可欠でした。
加えて、お客様が目指していたのは、新DCへの移行完了後も、今後の事業変化や規模拡大に柔軟に対応できる高度なITインフラの実現です。新DCには最先端のネットワーク技術や仮想化基盤を導入し、全体として従来よりも高い可用性・拡張性・保守性・セキュリティを持たせることで、現時点だけでなく将来にわたって安定して利用できる環境を構築することを目標とされていました。これには、既存DCから引き継がれる運用管理ノウハウの活用だけでなく、新たな運用フローや監視体制、リスク管理ポリシーの再設計も含まれます。移行完了後も、計画的なシステム拡張や新サービス導入にスムーズに対応できる基盤を整えることで、事業の成長とイノベーションをしっかりと支えていきたいという思いがありました。
このように、今回の更改プロジェクトでは、既存DCの老朽化対応を起点とし、新旧DCの高度・複雑な接続設計を通じて、サービス無停止・段階的移行・今後の成長を見据えた新DCへの集約という、極めて計画性の高いインフラ刷新を実現することが、お客様のゴールとなっていました。
Challenge
今回の新旧データセンター接続および移行プロジェクトにおいては、従来の単純なネットワーク経路設計では対応しきれない、非常に高度かつ詳細なルーティング制御が求められました。
まず、各拠点から通信する際に経由するデータセンターをきめ細かく指定する「詳細な経路指定」が大きな課題のひとつとなりました。たとえば、送信元となる拠点Aから宛先拠点Bへのトラフィックは新たに設置したデータセンターDC1を経由させる一方で、別のケースでは送信元拠点Cから宛先拠点Dへの通信は既存のデータセンターDC2を経由させるなど、拠点や通信パターンごとに異なる経路を明確に設定する必要がありました。このような要件に対応するためには、柔軟かつ精緻なルートコントロールが不可欠であり、従来の静的な経路設定では対応しきれませんでした。
また、データセンター障害時の「迂回経路設計」も重要な課題となりました。いずれかのデータセンターに障害が発生した場合でも、通信を速やかに別のデータセンターへ自動的に切り替え、サービスが継続できるようなバックアップ経路を確保しておく必要がありました。さらに、この迂回経路についても単純な自動切り替えにとどまらず、どの通信をどのデータセンターに迂回させるか、用途や拠点毎に詳細なルールが定められている場合が多く、障害発生時に最適なルートに自動で切り替える高度な設計が求められました。
加えて、「通信の往路と復路の経路一致」の実現も大きな技術的課題でした。ネットワーク内でパケットの送信経路(往路)と返信経路(復路)が異なってしまうと、経路上で遅延が生じたり、ファイアウォールやセキュリティ機器でパケットの整合性が保てず、通信障害の原因となります。そのため、送信元から宛先、宛先から送信元という双方向の通信が必ず同じ経路を通るように細かく制御を行う必要がありました。
これらの要件をすべて満たすためには、インターネットの標準的な経路制御であるBGP(Border Gateway Protocol)だけでは制御の柔軟性や即時性に限界があり、BGPだけに頼らない、より洗練されたルーティング設計と複雑な制御手法の導入が不可欠となっていました。結果として、詳細な経路指定、動的な迂回経路制御、往復経路の一致管理など、高度なネットワーク設計と運用ノウハウが強く求められるプロジェクトとなりました。
送信元拠点Aから宛先拠点Bへの通信は新設のDC1を経由し、別の送信元拠点Cから宛先拠点Dへの通信は既存のDC2を経由するといった各拠点がどのDCを経由して通信するか詳細な指定が存在。単純な経路設定ではなく、きめ細やかなコントロールが求められた。
いずれかのDCで障害が発生した場合、その通信をほかのDC経由に切り替える迂回経路を迅速に確保することが要求された。この迂回経路についても詳細な指定が存在し、障害発生時に適切なルーティングを自動的に行う設計が必要となった。
往路(送信元から宛先までのルート)と復路(宛先から送信元までのルート)が異なるルートを取ってしまうと、通信遅延やパケットの不整合が発生し、ネットワークの信頼性やパフォーマンスが損なわれるため、通信の往路と復路が一致するように制御する必要があった。
これらの要件を満たすには、単にBGP(Border Gateway Protocol)で経路情報を交換するだけでは不十分であった。BGPのみではエンドユーザーの複雑な要求やDC障害時の迅速な切り替え、通信往復の一致制御などの高度な経路管理を実現するのは難しく、より洗練されたルーティング設計と制御手法が必要となった。
Solution
これらの複雑かつ詳細なネットワーク課題に対して、様々な技術を組み合わせて解決に取り組みました。
まず、「パスアトリビュート機能」を最大限に活用し、経路制御の精度向上を目指しました。具体的には、BGPのパスアトリビュートに加えてコミュニティ機能も用い、各通信パターンごとに経由するデータセンターや希望するルートを柔軟に指定しました。これにより、標準的な経路選択では難しいきめ細かな制御を実現しましたが、それだけでは全ての詳細な要望に対応しきれない部分も残されていました。
そこで更に、「AS-Pathアクセスリスト」を追加導入しました。AS-Pathアクセスリストは、通信パス上の経路属性を細かく設定できるため、拠点ごとの指定経路や迂回ルートなど、お客様の細かな要件をより正確かつ動的に反映させることが可能となりました。これにより、障害時の自動切り替えや指定経路への迂回などを含め、複数パターンの要求を高精度に満たすことに成功しました。
設計した経路制御が意図している通りに動作することを保証するため、事前に「仮想環境での検証」を徹底しました。仮想環境内で各拠点からの通信パターンや迂回時の挙動など、全てのシナリオをシステム移行前にシミュレーションし、設計通りに経路が制御されているかを綿密に検証しました。これにより、実運用開始後のトラブルを未然に防ぐことができました。
さらに、「セグメントルーティング」への対応も行い、数百から数千単位の複数のルーティングセグメントに対して、拠点ごとや通信ごとに指定された経路を正確に割り振りました。これによって、規模の大きいネットワークにおいても、柔軟かつ詳細なルーティングを実現しています。
通信の品質や安定性の観点からも、「往復経路共通化」のための調整を行いました。往路と復路で異なる経路を選択してしまわないように制御し、通信遅延やパケット不整合のリスクを排除。これにより、ネットワーク全体の信頼性を高い水準で保つことができました。
最終的には、「BGPチューニング」を施すことで、こうした複雑な要件に対応できる最適なルーティングパスを確立しました。各種アトリビュートやアクセスリストの適用だけでなく、BGPの各種パラメータを細かく調整し、お客様の高度な運用ニーズに応えました。
これらの多層的かつ高度な技術対応により、複数拠点・複数データセンター間における詳細な経路指定、障害時の迂回経路、往復経路の一致など、厳しい要件をすべて満たすネットワーク更改を実現することができました。
BGPのパスアトリビュートやコミュニティ機能、AS-Pathアクセスリストを活用し、お客様ごとの詳細な経路指定や迂回ルート要求に柔軟かつ正確に対応しました。
仮想環境上で各通信パターンや障害時の挙動を検証することで、設計通りのネットワーク動作を事前に確認し、運用開始後のトラブルを未然に防ぎました。
セグメントルーティングへの対応や通信往復経路の共通化、BGPチューニングにより、通信遅延や不整合を防止。全体として高い安定性と信頼性を備えたネットワーク基盤を実現しました。
Services
ITインフラサービス
Solutions
Copyright (c) 2025 InfiniCore Co., Ltd. All rights reserved