Case Studies

ミッションクリティカル多拠点接続

システム断無しの難条件下で新規ネットワーク環境へ切り替え


稼働を止めることが出来ない環境においてシステム無停止でネットワーク切替を実現

InfiniCoreはお客様の既存環境における課題を可視化し、 特定した課題に対して最適なソリューションを提供します。

Goal

目指した姿

・既存設備老朽化対応

・大規模障害リスク/機器能力不足の解消

お客様が実現したかったこと

絶対に稼働を止められない重要な業務システムを運用する中で、既存ネットワーク設備の老朽化によるリスクを回避し、大規模障害や機器の能力不足が将来的な事業成長や安定運用の妨げにならないよう、万全の体制を整える必要があった。

長年稼働してきた既存ネットワーク設備は、部品やサポートの供給が困難となる老朽化フェーズに入っており、突発的な故障によるシステムダウンや障害リスクが高まっていた。しかし、対象となる業務システムは国内外複数拠点の基幹業務を支えており、24時間365日無停止運用が要求されるミッションクリティカルな環境である。そのため、従来型の「一時停止を伴うシステム更新」は許容されず、業務に一切影響を与えることなく、シームレスにネットワーク機器や構成のリプレースを実現する必要があった。

また、既存機器の能力面にも課題があり、事業規模が拡大してデータ通信量が増加することで、各拠点間を結ぶネットワークが容量不足や帯域の制約に直面する懸念があった。さらに、障害発生時に迅速な切り替えや自動復旧が困難であり、大規模なネットワーク障害が発生した場合、全拠点の業務が長時間停滞しかねないリスクを常に抱えていた。

お客様は、これらの課題を根本から解消し、ネットワークの可用性、拡張性、信頼性を大幅に高めた次世代のインフラ基盤へのスムーズなリプレースを目指していた。具体的には、稼働中のシステムを一切停止することなく、新旧ネットワークの切り替えや機器入替えを実施し、同時に各拠点間で帯域や通信キャパシティを強化する。さらに、障害時の自動フェイルオーバーや迅速な復旧機能を組み込み、どんな事態にも途切れることなく業務を継続できる「止まらない」ネットワーク環境を実現したいと考えていた。こうして、ビジネスの安定運用と将来の発展を見据えた、安全で強靭な多拠点ネットワーク環境の構築を目指していた。

Challenge

実現に向けた課題

大きな壁となったのは「無停止のネットワーク切替」である。お客様の業務はミッションクリティカル性が非常に高く、システム停止や一時的なダウンタイムが許されない厳しい要件下での作業が求められた。運用中のビジネスシステムに影響を及ぼすことなく、ネットワークを切り替えるには、移行作業自体に細心の注意を払う必要があった。加えて、既存のLAN内部には複数種類のダイナミックルーティングプロトコルが混在しており、それぞれが独自の経路制御やネイバー関係、再計算ロジックを持っているため、ルート切替ミスによる経路断やトラフィックループなど、予期せぬ障害を防止する設計が不可欠であった。結果として、ネットワークルーティングの整合性を維持しながらスムーズに切り替えられる高度な移行手順と、事前計画の精密化が要求され、設計作業は非常に複雑になった。

次に「実環境に近い検証環境の構築」にも大きな課題があった。複雑なネットワーク移行設計が現場で本当に機能するかどうかを事前検証するためには、実際と同様の機器構成やトポロジー、通信量を再現できる検証環境がどうしても必要となる。しかし社内に保有しているネットワーク機器やPCでは十分な台数や種類を揃えきれず、特に多拠点移行の疎通テストには大量のPCやエンドポイント機器が必要だった。この不足分を補うためには、追加の機器やPCを外部から調達する必要があり、予算・調達期間・設置スペースなど、リソース確保に多大な労力を要した。検証環境の不足はテストの網羅性にも影響を及ぼすため、完成度と精度を高めるための準備が重要なボトルネックとなった。

三つ目の課題は「遠距離間機器導入」である。新しいネットワーク機器は複数の拠点への設置が必要であり、各拠点は地理的に数キロメートル単位で離れて点在していた。全ての拠点で現地作業を行うには車両での移動が不可欠となり、移動手段の確保や、効率的なルート・時間計画の立案が求められる状況だった。さらに、遠距離間にまたがる複数拠点への同時展開を進めるためには、各現場ごとに適切な技術者や作業チームのアサインが必要だった。限られた作業期間の中で、全拠点の作業を計画的に完了するためには、人的リソースの割り振りや進捗管理など、要員計画と現場連携が非常に重要な課題となった。

これらの課題を着実に乗り越えることで、システム無停止による安全かつ確実なネットワーク切替を実現し、事業の安定運用と将来の拡張を支える強固なインフラ基盤構築に近づくことができた。

無停止のネットワーク切り替え

システムを止めずにネットワークを切り替える必要があり、複数のダイナミックルーティングプロトコルや複雑な経路が混在していたため、整合性を維持する高度な設計と慎重な計画が求められた。

実環境に近い検証環境の構築

移行設計を検証するための十分な機器やPCが社内に不足しており、実環境に近い検証環境を準備するためのリソース確保が課題となった。

遠距離間機器導入

複数の遠隔拠点で機器を導入するため、車両移動や効率的な移動計画、さらに人員アサインと要員計画が必要となった。

Solution

InfiniCoreによるソリューション

ネットワーク切替に伴うリスクを最小限に抑えるため、机上での移行設計案の策定と検証ラボでの詳細な動作検証を何度も繰り返し実施した。設計段階では複数のダイナミックルーティングプロトコルの互換性や動作の違いを徹底的に調査し、移行時に予期せぬ通信断が発生しないよう注意深く設計案を作り込んだ。検証では実際に通信断や経路不整合が発生した場合、直ちに設計内容を再見直し・調整し、再度ラボ環境で動作確認を行うことで、トライアンドエラーによる継続的な改善を続けた。この地道な検証サイクルにより、ネットワーク断をほとんど発生させることなく安全かつスムーズな移行計画の策定を可能とした。

また、検証テストについても精度を高めるため、実際に導入予定のネットワーク機器を顧客の検証場所に持ち込み、ほぼ本番ネットワーク構成と同じ環境を再現して移行検証を行った。稼働の再現性向上のため、10台以上のPCを使用して疎通試験を実施したが、限られたテストスタッフで効率的に作業できるように、スクリプトによるテスト自動化仕組みを導入。この結果、少人数で大量のテストケースを短時間で網羅的に実施でき、検証品質も格段に向上した。こうした実践的なテスト手法が高く評価され、移行計画の信頼性もお客様から強く支持された。

移行検証に必要となる機器の台数を社内だけでは賄いきれず、外部レンタル機器の調達やお客様が保有する遊休機材の一時借用など、工夫を凝らして不足分を補った。これにより、十分なネットワーク機器やPCを確保でき、限りなく本番環境に近い状態で検証を進めることができた。機器の調達に柔軟な対応を取り入れたことで、検証工程のボトルネックや品質低下を防ぎ、計画の精度向上に繋げた。

新規ネットワーク機器の設置・移行作業においては、遠隔地の複数拠点を同時に対応する必要があったが、全拠点に専門技術者を常駐させることは現実的に難しかった。そこで、お客様の現地スタッフによる物理設置作業の協力体制を整え、設置・ケーブル配線・物理切替などの現地作業はお客様スタッフが担当し、弊社技術者が拠点外からリモートでネットワーク設定変更や障害対応を行う運用に転換した。拠点ごとの連携手順やリモート作業体制を綿密に構築し、作業統括拠点から一元的に状況を管理することで、遠隔地でも確実かつスピーディに移行作業を完了させることができた。これによって人的リソースの最適化と、円滑かつ効率的なネットワーク導入を実現した。

これらの施策により、限られたリソース・厳しいスケジュール・高度な移行要求という制約下においても、無停止で安全かつ信頼性の高いネットワーク切替を成功させることができた。

詳細な移行設計と検証

机上での設計と実際の機器を使った検証を何度も繰り返し、通信断が起きないようトライアンドエラーによる移行計画を策定しました。

効率的な検証環境と自動化

十分な機器台数を外部調達や遊休機材の活用で確保し、テストを効率化するため自動化スクリプトを導入して高品質な検証を実施しました。

リモート中心の作業体制

お客様スタッフの協力体制とリモート操作を組み合わせることで、遠隔拠点間でも人的リソースを最適化し、円滑な移行を実現しました。

お客様サービス事例