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【5分でわかる】ランサムウェアとは?情シス担当者が押さえるべき基本と対策をわかりやすく解説

目次[非表示]

  1. ランサムウェアとは?まず押さえるべき3つの基本をわかりやすく解説
  2. 【あなたは大丈夫?】ランサムウェアの主な感染経路トップ3
  3. ランサムウェアに感染した場合の悲劇とは?事業を揺るがす3大リスク
  4. 情シス担当者が今すぐやるべきランサムウェア対策の完全ロードマップ
  5. まとめ:ランサムウェア対策は経営課題!自社を守るための次の一歩

「ある日突然、社内のファイルがすべて暗号化され、開けなくなった…」 「サーバーにアクセスすると、身代金を要求する不気味なメッセージが表示される…」

情報システム担当者であるあなたにとって、これは悪夢以外の何物でもないでしょう。近年、企業活動を根底から揺るがすサイバー攻撃として、ランサムウェアの脅威が深刻さを増しています。

本記事では、日々システムの安定稼働に奮闘されている情報システム担当者の皆様に向けて、ランサムウェアの基本から、具体的な感染経路、事業に与える甚大なリスク、そして今すぐ実践すべき対策のロードマップまで、わかりやすく徹底解説します。

この記事を読み終える頃には、ランサムウェアの脅威に対する漠然とした不安が、「何をすべきか」という明確なアクションプランに変わっているはずです。

ランサムウェアとは?まず押さえるべき3つの基本をわかりやすく解説

ランサムウェア(Ransomware)とは、「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語です。その名の通り、企業や組織が保有する重要なデータを人質に取り、その解放と引き換えに金銭(身代金)を要求する悪質なマルウェア(不正プログラム)の一種です。

データを「人質」にとる卑劣な手口とその仕組み

ランサムウェアの最も一般的な手口は、標的のネットワークに侵入し、サーバーやPCに保存されているファイル(業務文書、顧客データ、設計図など)を勝手に暗号化してしまうことです。

暗号化されたファイルは、正しい「鍵」がなければ元の状態に戻すことはできません。攻撃者はその「鍵」を盾に、「データを取り戻したければ、指定の暗号資産(ビットコインなど)で身代金を支払え」と脅迫してきます。まるで、現実世界における誘拐事件のように、デジタルデータを人質にとる卑劣な犯罪なのです。

なぜ企業が狙われるのか?ランサムウェア攻撃の主な目的

攻撃者がランサムウェアを用いる最大の目的は、金銭の窃取です。

個人よりもはるかに高額な身代金を支払う能力があり、かつ事業継続のためにデータの復旧を急がなければならない企業は、攻撃者にとって格好のターゲットとなります。特に、事業が停止した場合の損失が大きい製造業や医療機関、社会インフラを担う企業などは、深刻な被害に遭うケースが後を絶ちません。彼らは、企業が「支払わざるを得ない」状況に追い込むことで、莫大な利益を得ようと企んでいるのです。

知らないと危険!巧妙化するランサムウェアの主な種類

ランサムウェアは日々進化しており、その手口は巧妙化・悪質化の一途をたどっています。ここでは、特に警戒すべき代表的な種類を解説します。

暗号化型ランサムウェア

最も古典的で基本的なタイプです。前述の通り、ファイルやシステムを暗号化し、復号キーと引き換えに身代金を要求します。この段階では、被害はデータの利用不可に留まります。

二重恐喝(ダブルエクストーション)型

現在の主流となっている非常に悪質な手口です。攻撃者はデータを暗号化するに、まず機密情報や個人情報などを外部に窃取します。そして、「身代金を支払わなければ、暗号化したデータを復号しない」という脅迫に加え、「盗んだ機密情報をダークウェブなどで公開する」という二重の脅迫を行います。これにより、企業はたとえバックアップからデータを復旧できたとしても、情報漏洩という深刻なリスクに直面することになります。

三重恐喝(トリプルエクストーション)型

二重恐喝をさらに悪質化させた手口です。暗号化とデータ公開の脅迫に加え、盗んだ情報を利用して標的企業の顧客や取引先へ直接連絡したり、サービス停止を引き起こすDDoS攻撃を仕掛けたりするなど、第三者を巻き込んで多方面からプレッシャーをかけます。「言うことを聞かなければ、あなたの会社のせいで、あなたの顧客にも迷惑がかかる」と脅し、身代金の支払いを強要するのです。

【あなたは大丈夫?】ランサムウェアの主な感染経路トップ3

攻撃者はどのような手口で社内ネットワークに侵入してくるのでしょうか。最新の脅威動向を踏まえた、主な感染経路を解説します。

第1位:VPN機器やリモートデスクトップの脆弱性

コロナ禍以降、テレワークの普及に伴い急増したのが、VPN(Virtual Private Network)機器やリモートデスクトップ(RDP)の脆弱性を悪用した侵入です。ID/パスワードの使い回しや、修正パッチが適用されていない古いバージョンの機器を放置していると、そこが攻撃者にとって格好の侵入口となります。

警察庁の報告によると、令和6年上半期に確認されたランサムウェア被害のうち、感染経路が特定できたものの8割以上がVPN機器からの侵入であったことが判明しています。

出典: 警察庁「令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」

外部との接続点であるこれらの機器のセキュリティ対策は、もはや待ったなしの状況です。

第2位:不審なメールの添付ファイルやリンク(フィッシングメール)

「請求書」「業務連絡」「賞与通知」といった、思わず開いてしまいそうな件名で送られてくるフィッシングメールも、依然として主要な感染経路です。メールに添付されたWordやExcelファイルのマクロ機能を有効にしたり、本文中のURLをクリックしたりすることで、ランサムウェアがPCにダウンロード・実行されてしまいます。最近では、実在する取引先になりすました巧妙なメールも増えており、従業員一人ひとりの注意が求められます。

第3位:不正なWebサイトやソフトウェアのダウンロード

業務で必要なフリーソフトやツールに見せかけた不正なソフトウェアをダウンロードさせる手口です。また、改ざんされた正規のウェブサイトを閲覧しただけで、マルウェアに感染させられる「ドライブバイダウンロード攻撃」も存在します。業務に関係のないサイトへのアクセス制限や、ソフトウェア導入時のルール徹底が重要となります。

ランサムウェアに感染した場合の悲劇とは?事業を揺るがす3大リスク

もし、あなたの会社がランサムウェアに感染してしまったら、一体どのような事態に陥るのでしょうか。その被害は、単に「PCが使えなくなる」といったレベルでは済みません。

リスク1:事業停止による莫大な金銭的損失

サーバーや基幹システムが停止すれば、生産ラインは止まり、商品の受発注もできず、顧客へのサービス提供も不可能になります。事業が停止している間の売上損失はもちろん、サプライチェーン全体に影響を及ぼし、取引先からの損害賠償請求に発展する可能性もあります。復旧までの期間が長引けば長引くほど、その損失は雪だるま式に膨れ上がります。

リスク2:機密情報・個人情報の漏洩による信用の失墜

二重恐喝型ランサムウェアの場合、顧客情報や取引先の機密情報、従業員の個人情報、独自技術の設計データなどが漏洩するリスクがあります。情報漏洩が発生すれば、監督官庁への報告や顧客への謝罪、ブランドイメージの低下は避けられません。一度失った信用を取り戻すのは、決して容易なことではありません。

リスク3:復旧にかかる膨大なコストと時間的リソース

システムの復旧には、専門家による調査費用、新たなセキュリティ機器の導入費用、破損したハードウェアの交換費用など、多額のコストが発生します。さらに、情報システム担当者は、昼夜を問わずその対応に追われることになります。原因究明、関係各所への報告、復旧作業、再発防止策の策定…そのプロセスは心身ともに極度の負担を強いるものであり、通常業務が完全に麻痺してしまいます。

【事例紹介】国内企業で実際に起きた被害ケース

2024年6月、大手出版社のKADOKAWAがランサムウェア攻撃を受け、動画サービス「ニコニコ動画」を含む複数のサービスが長期間停止に追い込まれるという事件が発生しました。この攻撃は二重恐喝型であり、同社は情報漏洩の可能性も認めています。このインシデントによる特別損失は36億円に上ると見込まれており、ランサムウェア被害がいかに事業の根幹を揺るがすかを物語る象徴的な事例となりました。

情シス担当者が今すぐやるべきランサムウェア対策の完全ロードマップ

「では、具体的に何をすればいいのか?」 ここからは、情報システム担当者が主導すべきランサムウェア対策を、「予防」と「事後対応」の2つのフェーズに分けて具体的に解説します。

【予防が最重要】感染を未然に防ぐための5つの防御策

言うまでもなく、最も重要なのはランサムウェアに「感染させない」ことです。以下の5つの対策を徹底しましょう。

対策1:セキュリティソフト(EDR/EPP)の導入と適切な運用

従来型のアンチウイルスソフト(EPP: Endpoint Protection Platform)に加え、侵入後の不審な挙動を検知・対応するEDR(Endpoint Detection and Response)の導入が不可欠です。EPPで入り口を守り、万が一侵入されてもEDRで早期に検知・隔離する多層防御の体制を構築しましょう。

対策2:OS・ソフトウェアの脆弱性対策(パッチ管理の徹底)

OS、ソフトウェア、そして特にVPN機器などのネットワーク機器の脆弱性を放置しないことが極めて重要です。セキュリティパッチが公開されたら、速やかに適用する運用(パッチマネジメント)を徹底してください。脆弱性管理ツールなどを活用し、社内資産の状況を常に可視化しておくことが望ましいです。

対策3:データのバックアップと復旧テストの実施(3-2-1ルールの徹底)

バックアップは最後の砦です。しかし、ただ取得しているだけでは意味がありません。 「3-2-1ルール」を徹底しましょう。 - 3つのコピーを保持する(本番データ+2つのバックアップ) - 2種類の異なる媒体に保存する(例:NASとクラウドストレージ) - 1つはオフラインまたは物理的に離れた場所(オフサイト)に保管する

特に、ランサムウェアはネットワーク経由でバックアップデータまで暗号化しようとします。そのため、ネットワークから切り離されたオフラインバックアップが非常に有効です。また、いざという時に本当に復旧できるかを確認するため、定期的な復旧テストを必ず実施してください。

対策4:従業員へのセキュリティ教育と標的型メール訓練

どれだけ強固なシステムを導入しても、たった一人の従業員が不審なメールを開いてしまえば、そこから侵入を許してしまいます。全従業員を対象に、フィッシングメールの見分け方や不審なファイルを開かないといった基本的なリテラシー教育を定期的に実施しましょう。また、実際に偽の標的型メールを送付して対応を訓練するサービスを活用するのも効果的です。

対策5:ID管理とアクセス権限の最小化

万が一、IDが乗っ取られた際の被害を最小限に抑えるため、「最小権限の原則」を徹底してください。従業員には、業務上本当に必要なデータやシステムにしかアクセスできない権限を付与します。特に、管理者権限(特権ID)の管理は厳格に行い、利用者を限定し、その操作ログを監視する仕組みを導入しましょう。

【万が一の時に】被害を最小限に抑えるインシデント対応フロー

どれだけ予防策を講じても、100%防ぎきることは困難です。そのため、「感染は起こり得るもの」として、インシデント発生時の対応フローを事前に定め、関係者で共有しておくことが重要です。

ステップ1:初動対応(感染端末の隔離・証拠保全)

感染が疑われる端末を発見したら、被害拡大を防ぐために直ちにネットワークから物理的に切断(LANケーブルを抜くなど)します。その後、原因究明のために、シャットダウンなどはせず、そのままの状態で保全します。

ステップ2:状況把握と関係各所への報告・連絡

セキュリティ担当部署、経営層、法務部など、あらかじめ定めたエスカレーションルートに従って迅速に報告します。同時に、被害範囲(どのサーバー、どのデータが影響を受けているか)の特定を進めます。必要に応じて、外部のセキュリティ専門機関(CSIRTなど)や警察、個人情報保護委員会への連絡も準備します。

ステップ3:原因究明と封じ込め、根絶

外部専門家の支援も得ながら、侵入経路や原因を特定します。特定した侵入経路を塞ぎ、ネットワーク内に潜んでいる可能性のある他のマルウェアを完全に駆除(根絶)します。

ステップ4:バックアップからの復旧と再発防止策の策定

システムがクリーンな状態になったことを確認した後、事前にテスト済みの健全なバックアップデータからシステムを復旧します。そして、今回のインシデントの教訓を活かし、具体的な再発防止策を策定・実行して一連の対応は完了です。

注意:身代金(ランサム)は絶対に支払ってはいけない理由

追い詰められた状況で、「支払えば解決するのでは」という考えが頭をよぎるかもしれません。しかし、身代金は絶対に支払ってはいけません。その理由は以下の通りです。

  • 支払ってもデータが戻る保証はない:支払ったにもかかわらず、復号キーが送られてこない、または送られてきたキーが不完全でデータを復旧できないケースは少なくありません。
  • 攻撃者の活動を助長する:支払われた身代金は、次のサイバー攻撃のための活動資金となります。支払うことは、犯罪組織に加担するのと同じことです。
  • 再び標的になるリスクが高まる:「一度支払った企業は、また支払うだろう」と見なされ、将来的に再び攻撃のターゲットになる可能性が高まります。

警察庁や政府も、身代金を支払わないよう強く呼びかけています。

まとめ:ランサムウェア対策は経営課題!自社を守るための次の一歩

本記事では、ランサムウェアの基本から具体的な対策ロードマップまでを解説してきました。

この記事で解説したランサムウェア対策の重要ポイント

  • ランサムウェアはデータを人質に身代金を要求する卑劣な犯罪であり、二重恐喝・三重恐喝へと悪質化している。
  • 主な感染経路はVPN機器の脆弱性であり、早急な対策が求められる。
  • 感染した場合、事業停止、信用失墜、莫大な復旧コストという三重苦に見舞われる。
  • 対策の基本は「予防」。「脆弱性対策」「バックアップ(3-2-1ルールと復旧テスト)」「従業員教育」が特に重要。
  • 万が一に備え、インシデント対応フローを事前に準備しておくことが被害を最小化する鍵となる。
  • 身代金は絶対に支払わない

ランサムウェア対策は、もはや情報システム部門だけの問題ではありません。事業継続を左右する、全社で取り組むべき経営課題です。

まずは自社のセキュリティ体制チェックリストから始めよう

自社のどこにリスクが潜んでいるのか、何から手をつければよいのかを具体的に把握することが、対策の第一歩です。

「どこから手をつければ良いかわからない」「専門家の客観的な視点で自社の状況を評価してほしい」とお考えでしたら、ぜひ一度、弊社の無料セキュリティ相談をご活用ください。専門のアナリストが、貴社の状況をヒアリングし、今すぐ取り組むべき課題の洗い出しをお手伝いします。

未来の悲劇を防ぐための行動は、今この瞬間から始まります。

古田 清秀(ふるた きよひで)
古田 清秀(ふるた きよひで)
InfiniCore株式会社 ソリューションサービス事業本部 責任者 新卒以来30年以上IT業界に在籍し、サイバーセキュリティの最前線で活躍する専門家です。 ネットワークインフラ構築の営業を通じてセキュリティの重要性を痛感。前職では新規セキュリティサービスのプロジェクトマネージャー(PM)として、その立ち上げを成功に導きました。 長年の経験と深い知見を活かし、複雑なセキュリティ課題を分かりやすく解説。企業の安全なデジタル変革を支援するための情報発信を行っています。