catch-img

ランサムウェアとは?その意味を情シス担当者向けに5分で徹底解説

目次[非表示]

  1. ランサムウェアを一言で説明すると「身代金要求型ウイルス」
  2. ランサムウェアはどのように攻撃してくるのか?仕組みと手口
  3. 人事ではない!国内・海外のランサムウェア被害事例
  4. 情シス担当者が今すぐやるべきランサムウェア対策の完全ガイド
  5. ランサムウェアに関するよくある質問(FAQ)
  6. まとめ:ランサムウェアの意味を理解し、自社を守る次の一歩へ

日々システムの安定稼働に尽力されている情報システム担当者の皆様。近年、サイバー攻撃の中でも特に「ランサムウェア」の脅威が深刻化していることは、既にご存知のことでしょう。しかし、その意味や手口の巧妙さ、そして自社が取るべき対策について、最新の情報を正確に把握できていますでしょうか?

この記事では、多忙な情シス担当者の皆様のために、ランサムウェアの基本的な意味から、具体的な攻撃手口、国内外の被害事例、そして今すぐ実践すべき対策までを5分で理解できるよう、要点を絞って徹底的に解説します。

ランサムウェアを一言で説明すると「身代金要求型ウイルス」

ランサムウェア(Ransomware)とは、「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語です。その名の通り、企業や組織が保有する重要なデータを人質に取り、その解放と引き換えに金銭(身代金)を要求する悪質なマルウェア(ウイルス)のことを指します。

攻撃者は、様々な手口で社内ネットワークに侵入し、サーバーやPCに保存されているファイル(業務資料、顧客情報、財務データなど)を勝手に暗号化してしまいます。暗号化されたファイルは、正しい「鍵」がなければ開くことができなくなり、実質的に利用不能な状態に陥ります。そして、画面上に「データを返して欲しければ、指定の期日までに暗号資産(ビットコインなど)で身代金を支払え」といった旨の脅迫メッセージを表示するのです。

なぜ今、情シス担当者がランサムウェアの意味を正しく知るべきなのか?

「うちは大企業ではないから大丈夫」「基本的なセキュリティ対策はしている」といった油断は、もはや通用しません。ランサムウェア攻撃は、企業の規模や業種を問わず、あらゆる組織をターゲットにしています。

もし被害に遭えば、単にデータが使えなくなるだけではありません。 事業停止による甚大な損失 顧客情報の漏洩による信用の失墜 サプライチェーン全体への影響 復旧にかかる莫大なコストと時間

など、企業の存続を揺るがしかねない深刻な事態に発展する可能性があります。システムの安定稼働と情報資産の保護をミッションとする情シス担当者にとって、ランサムウェアの正確な知識と対策は、もはや避けては通れない必須のスキルとなっているのです。

この記事を読めば5分で分かること

  • ランサムウェアの基本的な意味と仕組み
  • 巧妙化・悪質化する最新の攻撃手口
  • 「対岸の火事」ではない、国内・海外の具体的な被害事例
  • 被害を未然に防ぐ「予防策」と、万が一の際の「事後対応」

それでは、ランサムウェアの脅威から自社を守るための第一歩を踏み出しましょう。

ランサムウェアはどのように攻撃してくるのか?仕組みと手口

ランサムウェアの脅威を正しく理解するためには、攻撃者がどのようなステップで企業のシステムを侵害し、データを人質に取るのかを知ることが不可欠です。ここでは、その攻撃の仕組みと手口を具体的に解説します。

企業のデータを人質に取るまでの攻撃ステップ

ランサムウェア攻撃は、大きく分けて3つのステップで実行されます。

STEP1:侵入・感染(主な3つの感染経路)

攻撃者は、まず企業のネットワーク内部へ侵入するための足掛かりを探します。主な侵入経路は以下の3つです。

  1. VPN機器の脆弱性悪用:テレワークの普及で利用が拡大したVPN(Virtual Private Network)機器のセキュリティ上の弱点(脆弱性)を突き、認証を突破して不正にアクセスします。警察庁の報告でも、ランサムウェア被害の感染経路として最も多いと指摘されています。
  2. リモートデスクトップ(RDP)経由の侵入:外部から社内PCを遠隔操作するためのリモートデスクトップ機能において、推測されやすい安易なパスワードが設定されている場合や、ID・パスワード情報が漏洩している場合に、それを悪用して侵入します。
  3. フィッシングメール:取引先や公的機関などを装った巧妙なメールを送りつけ、添付ファイルを開かせたり、記載されたURLをクリックさせたりすることで、マルウェアに感染させます。

STEP2:データの暗号化と窃取

ネットワークへの侵入に成功した攻撃者は、すぐには活動を開始しません。数週間から数ヶ月にわたって内部を静かに調査し(潜伏活動)、ファイルサーバーやバックアップデータ、機密情報がどこにあるかを特定します。

そして、入念な準備の後に活動を開始。管理者権限を奪取し、広範囲にわたってランサムウェアを展開します。サーバーやPC内のファイルは次々と強力なアルゴリズムで暗号化され、利用できない状態にされます。同時に、暗号化する前のデータを外部へ盗み出す(窃取する)のが最近の主流です。

STEP3:脅迫と身代金の要求

データの暗号化と窃取を完了した攻撃者は、PCのデスクトップ画面などに脅迫文(ランサムノート)を表示します。そこには、身代金の金額、支払い方法(主に追跡が困難な暗号資産)、支払い期日などが記載されています。

「期日までに支払わなければ、データを永久に復元できなくする」という脅しに加え、「支払いに応じなければ、盗んだ機密情報をインターネット上に公開する」という二重の脅迫を行うのが特徴です。

知っておくべきランサムウェアの進化と種類

ランサムウェアは、時代とともにより悪質かつ巧妙に進化を続けています。

暗号化するだけの「ばらまき型」

初期のランサムウェアは、不特定多数にメールを送りつけるなどして、単にデータを暗号化し身代金を要求するだけの単純なものでした。バックアップさえあれば復旧できる可能性が高かったため、比較的対処しやすいものでした。

情報公開も盾にする「二重脅迫(ダブルエクストーション)」

2019年頃から主流となったのが、「二重脅迫(ダブルエクストーション)」と呼ばれる手口です。これは、①データの暗号化に加えて、②盗み出したデータを公開するという脅迫を組み合わせるものです。

これにより、企業は「バックアップがあるから身代金は支払わない」という選択肢を取りにくくなりました。事業継続だけでなく、情報漏洩によるブランドイメージの毀損や法的責任という、新たなリスクを突きつけられることになったのです。

DDoS攻撃などを加える「三重脅迫・四重脅迫」

最近では、さらに脅迫の手口が追加されています。二重脅迫に加え、③DDoS攻撃(サーバーに大量のデータを送りつけてサービスを停止させる攻撃)で事業継続を妨害したり、④盗んだ情報を使って企業の顧客や取引先に直接連絡し、圧力をかけるといった手口です。これらは「三重脅迫(トリプルエクストーション)」や「四重脅迫」と呼ばれ、企業を精神的にも追い詰めます。

人事ではない!国内・海外のランサムウェア被害事例

ランサムウェアの被害は、もはやニュースの中だけの話ではありません。ここでは、国内外で実際に発生し、社会に大きな影響を与えた事例を紹介します。

【国内事例】サプライチェーン全体に影響を及ぼした製造業のケース

2022年、国内大手自動車部品メーカーがランサムウェア攻撃を受け、国内全工場の稼働を停止する事態に陥りました。原因は、取引先の子会社がマルウェアに感染し、そこを踏み台にメーカーのネットワークへ侵入されたことでした。

この影響で、親会社である大手自動車メーカーも国内全14工場の稼働停止を余儀なくされ、約1万3,000台の生産に影響が出ました。この事例は、自社だけでなく、サプライチェーン全体に被害が連鎖するというランサムウェアの恐ろしさを浮き彫りにしました。

【海外事例】インフラが停止し社会問題にまで発展したケース

2021年、米国の石油パイプライン最大手がランサムウェア攻撃を受け、操業を一時停止しました。このパイプラインは、東海岸で消費される燃料の約45%を供給しており、操業停止によってガソリン不足への懸念が広がり、一部地域ではパニック買いが発生するなど、社会インフラの脆弱性を露呈する結果となりました。

最終的に、同社はFBIの非推奨にもかかわらず、攻撃者に約440万ドル(当時のレートで約5億円)の身代金を支払ったと報じられています。

中小企業こそ危ない!狙われやすい企業の共通点とは?

「被害に遭うのは資金力のある大企業」と思われがちですが、現実は異なります。むしろ、セキュリティ対策に十分な予算や人材を割くことが難しい中小企業こそ、攻撃者にとって格好のターゲットなのです。

警察庁が発表した「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、令和5年上半期に警察庁へ報告されたランサムウェア被害103件のうち、中小企業が55件と半数以上(53%)を占めています。

出典: 警察庁「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」

狙われやすい企業には、以下のような共通点が見られます。 VPN機器やOSのアップデートを怠っている 単純なパスワードを使い回している 従業員へのセキュリティ教育が不十分 バックアップを取得していない、または簡単にアクセスできる場所に保管している

自社に当てはまる項目がないか、今一度確認が必要です。

情シス担当者が今すぐやるべきランサムウェア対策の完全ガイド

ランサムウェアの脅威から自社を守るためには、「被害を未然に防ぐ予防対策」と「万が一感染した場合の事後対応」の両面から備えることが極めて重要です。

被害を未然に防ぐ「予防対策」5つの要点

まずは、攻撃者に侵入の隙を与えないための「予防対策」です。以下の5つの要点を徹底しましょう。

技術的対策①:セキュリティソフト・EDRの導入と最新化

従来型のアンチウイルスソフト(パターンマッチング型)だけでは、未知のランサムウェアを検知することは困難です。PCやサーバーの不審な挙動を検知・分析して脅威を食い止めるEDR(Endpoint Detection and Response)の導入が強く推奨されます。また、導入しているセキュリティ製品の定義ファイルは、常に最新の状態に保つことが大前提です。

技術的対策②:OS・ソフトウェアの脆弱性対策(パッチ管理)

ランサムウェアの主要な侵入経路である、OS、ソフトウェア、VPN機器などの脆弱性を放置することは、玄関の鍵を開けっ放しにしているのと同じです。セキュリティパッチ(修正プログラム)が公開されたら、速やかに適用する「パッチ管理」の体制を確立しましょう。

技術的対策③:データのバックアップ(3-2-1ルール)

万が一、データが暗号化された場合の最後の砦がバックアップです。重要なのはその保管方法です。「3-2-1ルール」を基本としましょう。

  • 3つのコピーを保持する(原本+2つのバックアップ)
  • 2種類の異なる媒体に保存する(例:NASとクラウドストレージ)
  • 1つはオフサイト(社外の遠隔地)に保管する

特に、ネットワークから物理的に切り離されたオフラインバックアップは、ランサムウェア対策として極めて有効です。

人的対策①:従業員へのセキュリティ教育と標的型メール訓練

どれだけ高度な技術的対策を講じても、従業員一人の不注意が全ての防御を無にすることがあります。フィッシングメールの見分け方、不審なファイルを開かないこと、安易なパスワードを設定しないことなど、全従業員を対象とした定期的なセキュリティ教育が不可欠です。実際に偽の攻撃メールを送る「標的型メール訓練」も、リテラシー向上に効果的です。

人的対策②:アクセス権限の最小化と管理

従業員に必要以上のデータアクセス権限を与えていませんか?「必要最小限の原則」に基づき、業務上本当に必要なデータやシステムにしかアクセスできないように権限を見直しましょう。これにより、万が一アカウントが乗っ取られても、被害の範囲を限定することができます。

万が一感染した場合の「事後対応」ロードマップ

どれだけ対策をしても、100%の防御はあり得ません。感染を前提とした「事後対応」の計画を事前に策定しておくことが、被害を最小限に食い止める鍵となります。

初動対応:被害拡大を防ぐために最初に行うこと

ランサムウェアへの感染が疑われた場合、最も重要なのは被害拡大の防止です。

  1. ネットワークからの隔離:感染が疑われるPCやサーバーを、直ちにLANケーブルを抜く、Wi-Fiを切るなどしてネットワークから切り離します。
  2. 関係者への報告:速やかに上長および情報システム部門の責任者に報告します。自己判断で対応を進めるのは絶対に避けてください。

調査・復旧:被害範囲の特定とバックアップからの復元

初動対応後、専門家の支援も得ながら、以下の対応を進めます。

  1. 被害範囲の特定:どのサーバーやPCが、どこまで影響を受けているかを正確に調査します。
  2. 感染原因の特定:侵入経路や原因を特定し、セキュリティホールを塞ぎます。
  3. システムの復旧:影響を受けたシステムを初期化し、事前に取得していた安全なバックアップデータから復元します。

関係各所への報告と情報公開

個人情報の漏洩が確認された場合は、個人情報保護法に基づき、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務付けられています。また、株主や取引先、顧客に対して、被害状況や対応について誠実な情報公開を行うことが、信頼回復のために不可欠です。

ランサムウェアに関するよくある質問(FAQ)

身代金を支払えばデータは本当に復旧できる?支払うべきか?

結論から言うと、身代金は支払うべきではありません。 警察庁や政府機関も一貫して支払わないよう呼びかけています。理由は以下の通りです。

  • データが復旧される保証はない:支払ってもデータが返ってこない、あるいは一部しか返ってこないケースが多数報告されています。
  • 再び標的にされるリスク:「支払いに応じる企業」と認識され、再度攻撃のターゲットになる可能性があります。
  • 反社会的勢力の資金源となる:支払った身代金が、さらなるサイバー犯罪やテロ活動の資金源になる恐れがあります。

安易な支払いは、根本的な解決にならないばかりか、犯罪に加担する結果となりかねません。

警察や専門機関には相談した方が良いのか?

はい、速やかに相談すべきです。 被害に遭った際は、まず管轄の都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口に届け出ましょう。警察は捜査を行うだけでなく、他の被害組織の情報などから、復旧に関する有益な情報を提供してくれる可能性があります。

また、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)などの専門機関も、技術的な相談や対応支援を行っています。自社だけで抱え込まず、積極的に外部の知見を活用することが重要です。

個人でできるランサムウェア対策はあるか?

基本的な対策は、企業向けと同じです。 OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ。 セキュリティソフトを導入し、最新化する。 不審なメールやSMSのリンク、添付ファイルは開かない。 重要なデータは、外付けHDDやクラウドストレージなどに定期的にバックアップを取る。

これらの基本的な対策を徹底することが、個人レベルでできる最も有効な防御策です。

まとめ:ランサムウェアの意味を理解し、自社を守る次の一歩へ

本記事では、情報システム担当者の皆様が知っておくべきランサムウェアの基礎知識から具体的な対策までを解説しました。

本記事の重要ポイントおさらい

  • ランサムウェアは、データを人質に身代金を要求する悪質なマルウェアである。
  • 攻撃は「侵入→暗号化・窃取→脅迫」のステップで進み、近年は情報公開を盾にした「二重脅迫」が主流。
  • 被害は事業停止や情報漏洩につながり、企業の存続を脅かす。中小企業も主要なターゲットである。
  • 対策は「予防(パッチ管理、EDR、バックアップ等)」「事後対応(隔離、報告、復旧計画)」の両輪で進めることが不可欠。
  • 身代金は支払わず、警察や専門機関に速やかに相談することが推奨される。

今日から始めるセキュリティチェックリスト

ランサムウェアの脅威は、もはや他人事ではありません。この記事を読み終えた今、自社のセキュリティ体制を見直す絶好の機会です。以下のチェックリストを活用し、最初の一歩を踏み出しましょう。

  • VPN機器やサーバーOSのセキュリティパッチは、最新の状態になっているか?
  • 全てのPC・サーバーにEDRまたは最新のアンチウイルスソフトが導入されているか?
  • データのバックアップは「3-2-1ルール」に従って取得・保管されているか?
  • オフラインバックアップは存在する、かつ定期的に復旧テストを行っているか?
  • 従業員向けのセキュリティ教育や標的型メール訓練は定期的に実施されているか?
  • 万が一のインシデント発生に備えた対応計画(ロードマップ)は文書化され、周知されているか?

もし、一つでもチェックが付かない項目があれば、そこが貴社のセキュリティホールかもしれません。

ランサムウェア対策に関するより具体的なご相談や、自社のセキュリティレベルの診断をご希望でしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。専門のコンサルタントが貴社の状況に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。まずは無料相談から始めてみませんか?

古田 清秀(ふるた きよひで)
古田 清秀(ふるた きよひで)
InfiniCore株式会社 ソリューションサービス事業本部 責任者 新卒以来30年以上IT業界に在籍し、サイバーセキュリティの最前線で活躍する専門家です。 ネットワークインフラ構築の営業を通じてセキュリティの重要性を痛感。前職では新規セキュリティサービスのプロジェクトマネージャー(PM)として、その立ち上げを成功に導きました。 長年の経験と深い知見を活かし、複雑なセキュリティ課題を分かりやすく解説。企業の安全なデジタル変革を支援するための情報発信を行っています。