
なぜ感染?ランサムウェアの経路を徹底解説。VPN・リモートデスクトップの死角とは
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もはや他人事ではないランサムウェアの脅威、あなたの会社は大丈夫?
「ランサムウェア」という言葉をニュースで耳にしない日はないほど、その脅威は深刻化し、もはや対岸の火事ではありません。企業の規模や業種を問わず、あらゆる組織が攻撃対象となり、一度感染すれば事業継続に致命的なダメージを与えかねないーー。情報システム担当者の皆様は、日々その重圧と戦っておられることでしょう。本記事では、ランサム-ウェアの最新の感染経路を徹底的に解剖し、明日から実践できる具体的な対策までを網羅的に解説します。
急増する国内被害の実態と情報システム担当者が今、直面する課題
国内におけるランサムウェアの被害は、依然として高い水準で推移しており、その手口は巧妙化の一途をたどっています。特に、事業の根幹を支える中小企業が大きな標的とされている事実は見過ごせません。
警察庁が発表した『令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』によると、令和5年に警察庁に報告されたランサムウェア被害の件数は197件に上り、そのうち中小企業の被害が半数以上を占めました。さらに注目すべきは、感染経路の約8割が「VPN機器」と「リモートデスクトップ」からの侵入であったという事実です。
このデータは、多くの企業が良かれと思って導入したテレワーク環境が、今や最大のセキュリティリスクになっている可能性を示唆しています。情報システム担当者としては、利便性を損なうことなく、いかにしてこの新たな脅威から自社を守るかという、非常に困難な課題に直面しているのです。
「うちは対策済み」が危ない!巧妙化するランサムウェアの最新手口とは
「基本的なセキュリティソフトは導入済み」「怪しいメールは開かないよう社員教育もしている」--。そうした対策はもちろん重要です。しかし、攻撃者はその対策の一歩先を行こうと、常に手口をアップデートしています。
最近のランサムウェア攻撃は、単にデータを暗号化して身代金を要求するだけではありません。事前にデータを窃取しておき、「身代金を支払わなければ、機密情報や顧客情報をダークウェブで公開する」と脅迫する二重恐喝(ダブルエクストーション)が主流となっています。
さらに、データを暗号化すらせず、窃取した情報のみを元に脅迫する「ノーウェアランサム」と呼ばれる手口も出現。これにより、たとえバックアップからデータを復旧できたとしても、情報漏えいのリスクからは逃れられないという、より悪質な状況に追い込まれるのです。
従来の対策だけでは防ぎきれない巧妙な攻撃に対し、私たちはまず「敵」であるランサムウェアが、どのような経路で侵入してくるのかを正確に知る必要があります。次の章から、その主要な感染経路を一つずつ詳しく見ていきましょう。
【完全網羅】ランサムウェアの主要な感染経路7選
ランサムウェアは様々な経路から組織のネットワークに侵入します。ここでは、特に警戒すべき7つの主要な感染経路について、その手口とリスクを解説します。
感染経路1:VPN機器の脆弱性|信頼されたネットワークからの侵入
テレワークの普及に伴い、社外から社内ネットワークへ安全に接続するためのVPN(Virtual Private Network)は不可欠なインフラとなりました。しかし、この「安全なはずのトンネル」が、今や攻撃者にとって格好の侵入口となっています。VPN機器のファームウェアに脆弱性が見つかった場合、パッチを適用しない限り、攻撃者はその穴を突いていとも簡単に内部ネットワークに侵入できてしまうのです。
感染経路2:リモートデスクトップ(RDP)|テレワークの死角
VPNと同様にテレワークで多用されるリモートデスクトップ(RDP)も、重大なリスクを抱えています。特に、設定が不十分なままインターネットにRDPのポートを公開しているケースは非常に危険です。攻撃者は常にインターネット上をスキャンし、開いているRDPポートを探しています。一度見つかれば、あとはIDとパスワードを突破されるだけの問題となります。
感染経路3:フィッシングメール|従業員を狙う古典的だが強力な手口
古典的ながら、依然として最も効果的な侵入経路の一つがフィッシングメールです。攻撃者は従業員の心理的な隙を巧みに突き、不正な操作へと誘導します。
巧妙ななりすましメールと添付ファイル
取引先や社内の情報システム部、あるいは公的機関を装った巧妙なメールが送られてきます。その内容は「請求書の送付」「システムからの重要なお知らせ」「【緊急】パスワードの再設定依頼」など、思わずクリックしてしまうような件名や文面になっています。こうしたメールに添付されたWordやExcel、ZIPファイルを開いた瞬間に、マルウェアが実行されてしまうのです。
本文中の不正なURLリンク
メール本文に記載されたURLリンクも危険な罠です。例えば、「オンラインストレージに共有されたファイルを確認してください」「配送状況はこちらから追跡できます」といった文言で不正なWebサイトへ誘導します。リンク先のサイトでID・パスワードを入力させたり、不正なプログラムをダウンロードさせたりすることで、感染が拡大します。
感染経路4:Webサイトの閲覧|正規サイトの改ざんや不正広告
普段利用している正規のウェブサイトが改ざんされ、マルウェアをダウンロードさせる仕掛けが施されている場合があります(ドライブバイダウンロード攻撃)。また、Web広告の配信ネットワークを悪用し、不正な広告(マルバタイジング)を表示させ、クリックしたユーザーを危険なサイトへ誘導する手口も確認されています。ユーザーは正規のサイトを閲覧しているつもりでも、気づかぬうちにランサムウェアに感染してしまうリスクがあるのです。
感染経路5:ソフトウェアの脆弱性|OSやアプリケーションの更新漏れ
利用しているPCのOS(Windows, macOSなど)や、インストールされているアプリケーション(ブラウザ, Adobe製品, Officeソフトなど)に脆弱性が存在すると、それが侵入口となることがあります。ソフトウェアの提供元は脆弱性が発見されるたびに修正プログラム(セキュリティパッチ)を配布しますが、その適用が遅れると、攻撃者に絶好の機会を与えてしまいます。
感染経路6:USBメモリ等の外部デバイス|物理的な経路からの侵入リスク
ネットワーク経由の攻撃だけでなく、物理的なデバイスからの侵入リスクも忘れてはなりません。出所不明のUSBメモリを安易に会社のPCに接続したり、私物のデバイスを無許可で業務ネットワークに接続したりすることで、マルウェアが持ち込まれる可能性があります。意図せず拾ったUSBメモリにマルウェアが仕込まれている「USBドロップ攻撃」のような手口も存在します。
感染経路7:サプライチェーン攻撃|取引先を踏み台にした間接的な攻撃
自社のセキュリティが強固でも、取引先や業務委託先など、サプライチェーンを構成するセキュリティの弱い組織がまず攻撃され、そこを踏み台として自社が標的になるケースです。例えば、取引先とのデータ連携に利用しているシステムや、保守目的で許可している外部からのアクセス経路などが悪用され、間接的に侵入を許してしまうのです。
これらの経路は単独で利用されることもあれば、組み合わせて利用されることもあります。特にリスクが高いと指摘されているVPNとリモートデスクトップについて、次章でさらに深く掘り下げていきましょう。
【徹底解説】なぜVPN・リモートデスクトップが狙われるのか?その死角と対策
先の警察庁のデータが示す通り、ランサムウェアの主な侵入経路はVPN機器とリモートデスクトップです。なぜ、本来セキュリティを高めるため、あるいは利便性を向上させるためのツールが、最大の弱点となってしまうのでしょうか。その構造的な死角と対策を解説します。
見落とされがちなVPNのセキュリティホールとその仕組み
VPNは「仮想的な専用線」を構築し、通信を暗号化することで安全性を担保します。しかし、そのVPN装置自体に脆弱性があれば、話は全く別です。
脆弱性パッチの未適用による侵入リスク
VPN機器のメーカーは、製品に脆弱性が発見され次第、修正するためのファームウェアアップデート(パッチ)を提供します。しかし、情報システム担当者がこの情報をキャッチアップできていなかったり、業務影響を懸念して適用を後回しにしたりするケースが少なくありません。攻撃者は公開された脆弱性情報を元に、パッチが未適用の機器を世界中から探し出し、自動的に攻撃を仕掛けます。一度侵入を許せば、そこはもう社内ネットワーク同然なのです。
ID/パスワードの脆弱性と多要素認証(MFA)の重要性
VPN接続時の認証がIDとパスワードのみの場合、その情報が漏えいしたり、推測されやすい単純なものが設定されていたりすると、簡単になりすましを許してしまいます。ここで極めて重要になるのが多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)です。ID/パスワード(知識情報)に加えて、スマートフォンアプリへの通知(所持情報)や指紋認証(生体情報)などを組み合わせることで、たとえパスワードが破られても不正アクセスをブロックできます。MFAはもはやVPN運用の必須要件と言えるでしょう。
リモートデスクトップに潜む危険性とランサムウェア感染プロセス
社内の自席PCに社外からアクセスできるリモートデスクトップは非常に便利ですが、設定一つで非常に危険な状態になります。
外部に公開されたRDPポートの危険性
最も危険なのは、特別な制限を設けずにリモートデスクトップのポート(通常3389/TCP)をインターネットに公開してしまうことです。攻撃者は専用ツールで常にインターネット上をスキャンしており、公開されたRDPポートはすぐに見つけられてしまいます。これは、家の玄関の鍵を開けっ放しにしているのと同じ状態です。
総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)による認証突破
公開されたRDPポートを見つけた攻撃者が次に行うのが、総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)です。ツールを使い、考えうる全てのパスワードの組み合わせを機械的に試行し、認証の突破を狙います。特に「password」「12345678」のような単純なパスワードや、アカウント名と同じパスワードを設定している場合、ごく短時間で侵入されてしまいます。侵入後は、攻撃者のやりたい放題です。内部の情報を探索し、最終的にランサムウェアを展開して広範囲のサーバーやPCを暗号化してしまいます。
感染経路を断つ!明日から実践できるランサムウェア対策ロードマップ
ランサムウェアの多様な感染経路を理解した上で、次は具体的な防御策を講じる番です。対策は「技術」と「人」の両面からアプローチすることが不可欠です。ここでは、情報システム担当者が明日から実践できる対策をロードマップとして示します。
技術的対策:システムの防御壁を強化する5つの必須項目
システムの脆弱性を放置せず、多層的な防御を構築することが技術的対策の基本です。
脆弱性管理の徹底とパッチ適用の迅速化
OS、ソフトウェア、そしてVPN機器などのネットワーク機器の脆弱性情報を常に収集し、セキュリティパッチが公開されたら速やかに適用する体制を構築します。IT資産管理ツールなどを活用し、社内PCやサーバーのパッチ適用状況を可視化することが第一歩です。
侵入を検知・防御するEDR/XDRの活用
従来のアンチウイルスソフト(EPP)が「既知のウイルスの侵入を防ぐ」ことを目的とするのに対し、EDR(Endpoint Detection and Response)はPCやサーバー内部の不審な挙動を検知し、侵入後の対応を迅速化するソリューションです。さらに、ネットワークやクラウドまで含めて統合的に脅威を監視・分析するXDR(Extended Detection and Response)も有効です。これらの導入により、万が一侵入を許した場合でも、被害が拡大する前に対処できる可能性が高まります。
アクセス権限の最小化とゼロトラストの考え方
「社内ネットワークは安全」という従来の考え方を捨て、「あらゆるアクセスを信用しない」というゼロトラストの概念に基づいたセキュリティモデルへの移行が求められます。具体的には、従業員のアカウントに業務上不要な管理者権限を与えず、必要最小限の権限のみを付与する「最小権限の原則」を徹底します。これにより、万が一アカウントが乗っ取られても、被害範囲を限定できます。
バックアップの「3-2-1ルール」と復旧テストの実施
データバックアップは最後の砦です。「3-2-1ルール」(データを3つコピーし、2種類の異なる媒体に保存し、そのうち1つはオフラインの場所に保管する)を基本とし、堅牢なバックアップ体制を構築します。特に、ランサムウェアがバックアップデータまで暗号化することを防ぐため、ネットワークから隔離された場所に保管することが極めて重要です。また、「バックアップを取っているだけ」で安心せず、実際にデータを復旧できるかを確認する復旧テストを定期的に実施してください。
ネットワークのセグメンテーションによる被害の極小化
社内ネットワークを部署やサーバーの役割ごとに小さなセグメントに分割し、セグメント間の不要な通信をファイアウォールで遮断します。これにより、万が一ランサムウェアが特定のセグメントに侵入しても、他のセグメントへ感染が広がるのを防ぎ、被害を最小限に食い止めることができます。
人的対策:最大の脆弱性「人」を最強の防衛ラインに変える方法
どれだけ高度なシステムを導入しても、それを使う「人」のセキュリティ意識が低ければ、脅威は簡単に侵入します。従業員一人ひとりをセキュリティの担い手に変えるための対策が必要です。
効果的なセキュリティ教育と標的型攻撃メール訓練
フィッシングメールの手口やマルウェア感染のリスクについて、全従業員を対象とした定期的なセキュリティ教育を実施します。座学だけでなく、実際に偽の攻撃メールを送付して従業員の対応をテストする「標的型攻撃メール訓練」を繰り返し行うことで、実践的な対応能力を養うことができます。
インシデント発生時の報告・連絡体制の構築
「PCの動作が急に重くなった」「見慣れない警告画面が表示された」など、少しでも異常を感じた際に、従業員が躊躇なく、かつ迅速に情報システム部に報告できる体制を整えることが重要です。早期発見・早期報告が被害拡大を防ぐ鍵となります。インシデント発生時の連絡フローを明確にし、全社に周知徹底しましょう。
まとめ:ランサムウェアの脅威から企業の未来を守るために
本記事では、ランサムウェアの主要な感染経路から、情報システム担当者が実践すべき具体的な対策までを網羅的に解説してきました。最後に、重要なポイントを改めて整理します。
本記事で解説した主要感染経路と対策の重要ポイント総括
- 脅威の現状: ランサムウェア被害は高水準で推移し、特にテレワークで利用されるVPN機器とリモートデスクトップが最大の侵入口となっている。
- 主要な感染経路: VPNやRDPの脆弱性に加え、フィッシングメール、改ざんサイト、ソフトウェアの更新漏れ、USBメモリ、サプライチェーン攻撃など、経路は多岐にわたる。
- 技術的対策: 脆弱性管理の徹底、EDR/XDRの活用、ゼロトラストの考えに基づくアクセス権限の最小化、バックアップの3-2-1ルール、ネットワークの分割が鍵。
- 人的対策: セキュリティ教育と標的型攻撃メール訓練による従業員の意識向上、そしてインシデント発生時の迅速な報告体制の構築が不可欠。
これらの対策は、一つだけ行えば万全というものではありません。技術と人の両輪で、多層的な防御を継続的に改善していくことが、企業の未来をランサムウェアの脅威から守る唯一の道です。
情報システム担当者が今すぐ始めるべきアクションプラン
この記事を読み終えた今、あなたの会社はどこに脆弱性を抱えているでしょうか? まずは自社の現状を客観的に把握することから始めてみませんか。
「自社のVPN設定は本当に安全だろうか?」 「ランサムウェア対策、何から手をつければいいか分からない」 「インシデントが発生した際の具体的な対応フローに不安がある」
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