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失敗しないローカルブレイクアウト|導入前に確認すべき5つのチェックリスト

目次[非表示]

  1. はじめに:クラウド利用で社内ネットワークが遅くなる理由
  2. 1.ローカルブレイクアウトとは
  3. 2.LBO導入で期待できる3つの効果
  4. 3.導入前に知っておきたいリスク
  5. 4.失敗しないための5つのチェックリスト
  6. 5.中小企業で検討しやすい実装パターン
  7. 6.成功と失敗を分けるポイント
  8. まとめ:LBOは「経路変更」ではなく「運用設計」まで行う

はじめに:クラウド利用で社内ネットワークが遅くなる理由

「Teamsの会議で映像が止まる」「SharePointのファイルを開くまで時間がかかる」。こうした症状は、全拠点の通信を本社やデータセンターへ集約するネットワーク構成が、クラウド利用量の増加に追いついていないサインかもしれません。

Microsoft 365、Zoom、SalesforceなどのSaaSを日常的に利用する現在、通信を一度本社へ戻してからインターネットへ接続する構成では、回線帯域だけでなくファイアウォールやプロキシの処理能力、同時接続数もボトルネックになります。

そこで検討されるのが、特定のクラウドサービスへの通信を拠点から直接インターネットへ接続する「ローカルブレイクアウト(LBO)」です。

本記事では、LBOの仕組み、メリットと注意点、導入前に確認したい5つのチェックポイントを、情報システム担当者向けに整理します。

1.ローカルブレイクアウトとは

ローカルブレイクアウト(Local Breakout)とは、Microsoft 365やZoomなど、あらかじめ定めた通信を本社やデータセンターへ経由させず、各拠点のインターネット回線から直接接続する仕組みです。インターネットブレイクアウトと呼ばれることもあります。

センター集約型との違い

センター集約型では、支店や営業所の通信を本社・データセンターへ集約し、ファイアウォールやプロキシを経由してインターネットへ接続します。ポリシーを一元管理しやすい一方、クラウド通信が増えるほど本社側の回線や機器に負荷が集中します。

LBOでは、対象を限定した通信だけを拠点から直接接続し、それ以外は従来どおり本社側のセキュリティ設備を経由させます。通信経路を適切に分散することで、本社回線の負荷と遅延を抑えます。

帯域だけではない「同時接続数」の問題

Microsoft 365やWindows Updateは、大容量通信に加えて多数の接続を発生させます。利用者や拠点が増えると、ファイアウォールやプロキシの同時セッション数、NATテーブルが上限に達し、回線を増強しても改善しない場合があります。

そのため、原因調査では通信量だけでなく、同時接続数、機器のCPU・メモリ使用率、セッション上限も確認する必要があります。

自治体のガイドラインから見る動向

総務省の地方公共団体向けガイドラインでは、特定のクラウドサービスへ直接接続する構成としてα’モデルが示されています。ただし、直接接続によってセキュリティリスクが高まるため、必要なアクセス制御や監視などの対策が求められます。民間企業でも、速度改善だけを目的にせず、セキュリティ要件とセットで設計することが重要です。

2.LBO導入で期待できる3つの効果

2-1:クラウド利用時の遅延を抑えやすい

本社のプロキシや回線を経由する距離を短縮できるため、Teams、SharePoint、OneDriveなどの応答性やWeb会議品質の改善が期待できます。ただし、効果は拠点回線の品質、SaaS側の障害、端末性能にも左右されます。導入前後で遅延、パケットロス、利用者体感を測定しましょう。

2-2:本社側の設備増強を抑えられる可能性がある

拠点から直接接続する通信が増えれば、本社へ戻るトラフィックを削減できます。その結果、本社回線やゲートウェイ機器の増強時期を延ばせる可能性があります。削減効果は、対象サービスの通信量と現行構成を基に試算してください。

2-3:障害時の業務継続性を高められる

本社回線に障害が発生しても、拠点の回線とLBO対象サービスが利用できれば、クラウド業務を継続できる場合があります。ただし、冗長回線、認証基盤、DNS、端末側の通信制御なども含めてBCPを設計する必要があります。

3.導入前に知っておきたいリスク

3-1:セキュリティ監視の経路が変わる

本社のUTMやプロキシを通らない通信は、従来と同じログ・検査ができません。許可範囲を広げすぎると、マルウェア感染や情報持ち出しの発見が遅れる恐れがあります。対象通信、利用者、端末、宛先、ログ保存期間を明確にしましょう。

3-2:拠点ごとの運用が複雑になる

拠点のルーター、回線、ファームウェア、設定、障害対応を継続的に管理する必要があります。設定の一元管理、バックアップ、変更承認、監視体制まで事前に決めておくことが重要です。

3-3:IPアドレスだけではアプリを正確に分けにくい

同じクラウド事業者の基盤を複数サービスが共有している場合、IPアドレスだけで許可・拒否を分けるのは困難です。FQDN、アプリケーション識別、ベンダーが提供するエンドポイント情報など、機器が対応する制御方式を確認してください。

4.失敗しないための5つのチェックリスト

チェック1:対象通信を限定・定義できているか

「インターネット通信をすべて直接接続する」のは避け、まずは通信量が多く、業務上必要なSaaSから始めます。Microsoft 365、Zoom、Boxなどを候補にし、一般的なWeb閲覧や未承認サービスは従来のセキュリティ経路に残す設計が基本です。

SaaSの接続先は変化するため、固定IPの手動登録だけに依存すると、突然接続できなくなる可能性があります。FQDN制御、公式エンドポイント情報との連携、自動更新の可否を確認しましょう。

チェック2:LBO経路のセキュリティを補完できるか

LBO対象通信が本社UTMを通らない場合、端末のEPP・EDR、DNSセキュリティ、クラウド型プロキシ、SASEなどを組み合わせます。重要なのは製品名ではなく、次の機能が実際に使えることです。

• 端末の挙動検知と封じ込め

• URL・DNS・マルウェア対策

• 利用者・端末単位のアクセス制御

• 通信ログの収集と分析

• インシデント発生時の調査手順

チェック3:拠点回線の品質を確認したか

LBO先の回線が混雑していれば、経路を変えても改善しません。PPPoEやIPoEなどの接続方式、時間帯別の実効速度、遅延、パケットロス、回線の冗長性を確認します。回線変更は、測定結果と業務要件に基づいて判断しましょう。

チェック4:設定変更を継続運用できるか

PACファイルは導入しやすい一方、SaaSの仕様変更や配布ミスが全社障害につながることがあります。拠点数が多い場合は、SaaS情報の自動更新、設定の一元管理、ロールバック、監視機能を備えたルーターやSD-WANを検討します。

チェック5:費用対効果を測定できるか

回線・機器の増強費用だけでなく、ライセンス、運用工数、セキュリティ対策、教育、障害対応まで含めて比較します。導入前に、次のKPIを決めておくと効果を評価しやすくなります。

• SaaSの平均・最大遅延

• パケットロス率

• 本社回線のピーク使用率

• セッション使用率

• 問い合わせ件数と対応時間

• 設定変更にかかる工数

5.中小企業で検討しやすい実装パターン

5-1:LBO対応ルーターを活用する

少数拠点で、対象SaaSが限定されている企業に向く方法です。初期費用を抑えやすい一方、拠点が増えると設定・更新・ログ確認の負荷が増えます。自動更新とリモート管理の有無を確認してください。

5-2:SD-WANで一元管理する

多拠点企業では、クラウド管理画面から通信ポリシーを統一し、設定配布や状況確認を効率化できます。月額ライセンスだけでなく、導入設計、回線、運用支援を含めた総額で比較しましょう。

5-3:SASEへ段階的に移行する

拠点やテレワーク環境を横断して、ネットワークとセキュリティを統合したい企業向けです。アクセス制御や可視化を強化できる一方、要件定義と運用設計の難易度が高くなります。まずは対象ユーザー・アプリ・拠点を限定したPoCから始めると安全です。

6.成功と失敗を分けるポイント

失敗しやすい例


速度改善を急ぐあまり、対象範囲を広げすぎたり、ログ監視や端末対策を後回しにしたりすると、異常通信の発見が遅れます。LBOの設定だけでなく、許可リスト、端末防御、監視、インシデント対応を同時に設計しましょう。

成功しやすい進め方

  1. 現状の通信量・遅延・セッション数を測定する
  2. 対象SaaSと除外条件を定義する
  3. 1拠点または少人数でPoCを実施する
  4. セキュリティログと障害対応を検証する
  5. 効果を測定してから全拠点へ展開する

まとめ:LBOは「経路変更」ではなく「運用設計」まで行う

ローカルブレイクアウトは、クラウド利用による遅延や本社回線の混雑を改善する有効な選択肢です。一方で、対象範囲を誤るとセキュリティリスクや運用負荷が増えます。

導入前には、次の5点を確認してください。

• 対象通信を限定し、更新方法を決める

• LBO経路のセキュリティとログを補完する

• 拠点回線の品質と冗長性を確認する

• 設定変更と障害対応を一元管理する

• 効果と総コストをKPIで評価する

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※導入効果や適切な構成は、回線、機器、利用サービス、セキュリティ要件によって異なります。事前の測定と検証を推奨します。

古田 清秀(ふるた きよひで)
古田 清秀(ふるた きよひで)
InfiniCore株式会社 ソリューションサービス事業本部 責任者 新卒以来30年以上IT業界に在籍し、サイバーセキュリティの最前線で活躍する専門家です。 ネットワークインフラ構築の営業を通じてセキュリティの重要性を痛感。前職では新規セキュリティサービスのプロジェクトマネージャー(PM)として、その立ち上げを成功に導きました。 長年の経験と深い知見を活かし、複雑なセキュリティ課題を分かりやすく解説。企業の安全なデジタル変革を支援するための情報発信を行っています。