
知らないでは済まされない「シャドーIT」の危険性とは?情報漏洩を防ぐ対策を解説
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はじめに:あなたの会社は大丈夫?便利さの裏に潜む「シャドーIT」の脅威
「現場の担当者が、申請なしで便利なWeb会議ツールを使い始めた」「開発チームが、会社の許可なく外部のプロジェクト管理ツールで情報を共有している」
情報システム担当者であるあなたの耳にも、このような話が聞こえてきたことがあるかもしれません。業務効率化のために良かれと思って導入したツールが、実は会社全体を揺るがす重大なセキュリティリスクの温床になっているとしたら…?
それが、今回解説する「シャドーIT」の脅威です。
この記事では、多くの企業が直面しているシャドーITの問題に焦点を当て、その発生原因から具体的な対策、さらには対策を成功に導くためのポイントまで、情報システム担当者が知っておくべき全てを網羅的に解説します。
「うちの会社は大丈夫だろう」という油断が、取り返しのつかない事態を招くかもしれません。この記事を読めば、自社に潜むリスクを正しく把握し、安全と利便性を両立させるための具体的な一歩を踏み出すことができるはずです。
そもそも「シャドーIT」とは?身近な具体例で分かりやすく解説
シャドーIT(Shadow IT)とは、企業のIT部門の承認や管理が及ばないまま、従業員や各業務部門の判断で利用されているデバイス、ソフトウェア、クラウドサービスなどを指します。
「影(シャドー)」という言葉が示す通り、情報システム部門からはその存在が見えず、管理下にないIT資産のことです。
具体的には、以下のようなものがシャドーITに該当します。
- 個人所有のデバイスの業務利用(BYOD): 私物のスマートフォンやノートPC、タブレット
- 無許可のソフトウェア・アプリケーション: フリーのテキストエディタ、画像編集ソフト
- 無許可のクラウドサービス:
- オンラインストレージ: Google Drive, Dropbox, OneDrive の個人アカウント
- コミュニケーションツール: Slack, Chatwork, LINE の個人アカウント
- Web会議システム: Zoom, Google Meet の無償版
- ファイル転送サービス: WeTransfer, ギガファイル便
- プロジェクト管理ツール: Trello, Asana の無償版
- 生成AIサービス: ChatGPT, Gemini の個人アカウント
これらの多くは、従業員が「業務を効率化したい」という善意から使い始めるケースがほとんどです。しかし、その手軽さの裏には、情報漏洩やマルウェア感染といった深刻なリスクが潜んでいるのです。
なぜシャドーITは発生してしまうのか?現場が抱える3つの主要因
シャドーITは、決して従業員の悪意だけで発生するわけではありません。むしろ、その背景には組織的な課題が隠されていることがほとんどです。ここでは、シャドーITが発生する主な3つの要因を解説します。
要因1:業務効率化を求める従業員の善意
最も多い発生要因は、従業員の「もっと効率的に、スマートに仕事を進めたい」という前向きな思いです。
例えば、取引先と大容量のファイルを共有する必要がある際に、社内のファイルサーバーの容量が一杯だったり、転送速度が遅かったりするとします。その時、従業員は手軽な外部のファイル転送サービスを「一時的な解決策」として利用してしまうかもしれません。
これは、ルール違反と知りつつも、目の前の業務を円滑に進めることを優先した結果であり、一概にその従業員だけを責めることはできません。
要因2:会社が提供するツールの利便性の低さ
会社が公式に導入しているツールが、現代の業務スタイルに合っていなかったり、使い勝手が悪かったりすることも大きな要因です。
- 「社内のチャットツールはUIが古く、ファイル共有もスムーズにいかない」
- 「Web会議システムが頻繁に落ちてしまい、商談に支障が出る」
- 「スマートフォンのアプリに対応しておらず、外出先で確認ができない」
このような不満が現場に溜まると、従業員はより高機能で使いやすい個人向けの無料ツールに流れてしまいます。会社が提供するIT環境の利便性が低いほど、シャドーITが生まれる土壌ができてしまうのです。
要因3:IT部門への申請プロセスの煩雑さ
新しいツールを利用したいと思っても、IT部門への申請プロセスが複雑で時間がかかりすぎる場合も、シャドーITの温床となります。
「申請書を提出し、複数の部署の承認を得て、導入されるのは数週間後…」といった状況では、スピード感が求められる現場のニーズに応えることはできません。結果として、従業員は面倒な手続きを避け、「手っ取り早く使えるから」と無許可のツールに手を出してしまうのです。
迅速なビジネス展開の足かせとなるような煩雑なプロセスは、従業員に「IT部門は現場の味方ではない」という印象を与え、シャドーITの利用を助長してしまいます。
【知らないでは済まされない】シャドーITが引き起こす5つの重大なセキュリティリスク
利便性の向上というメリットの裏で、シャドーITは企業に深刻なダメージを与えかねない多くのリスクを内包しています。ここでは、情報システム担当者が特に警戒すべき5つの重大なリスクについて、具体的に解説します。
リスク1:機密情報や個人情報の漏洩
シャドーITが引き起こす最大のリスクは、機密情報や個人情報の漏洩です。
従業員が悪意なく利用している無料のオンラインストレージやチャットツールは、企業のセキュリティポリシーが適用されていません。そのため、アクセス権限の設定ミスやサービス自体の脆弱性により、顧客情報や開発中の製品情報といった機密データが、意図せず外部に公開されてしまう危険性があります。
実際に、個人契約のクラウドストレージに保存した業務ファイルが、共有設定の誤りによって誰でも閲覧できる状態になっていた、というインシデントは後を絶ちません。一度情報が漏洩すれば、企業の社会的信用の失墜や、顧客からの損害賠償請求に発展する可能性があります。
リスク2:マルウェア感染・サイバー攻撃の侵入口となる
IT部門が管理していないデバイスやソフトウェアは、セキュリティ対策が不十分な場合が多く、マルウェア感染やサイバー攻撃の格好の標的となります。
例えば、個人所有のPCがウイルス対策ソフトの未導入やOSのアップデート不足によりマルウェアに感染した場合、そのPCを社内ネットワークに接続した途端、感染が拡大し、サーバーダウンやデータの改ざん、ランサムウェア被害といった甚大な被害を引き起こす可能性があります。
シャドーITは、堅牢なはずの社内セキュリティに思わぬ「抜け穴」を作り出し、攻撃者にとっての侵入口を与えてしまうのです。
リスク3:コンプライアンス違反と法的責任の発生
企業の活動は、個人情報保護法や業界ごとのガイドラインなど、様々な法令や規制のもとに成り立っています。シャドーITの利用は、これらのコンプライアンス(法令遵守)に違反するリスクをはらんでいます。
例えば、顧客の個人情報を、セキュリティ要件を満たしていない海外のクラウドサービスに保存してしまった場合、個人情報保護法に抵触する可能性があります。違反が発覚すれば、行政からの厳しい指導や罰金、さらにはブランドイメージの低下は避けられません。
IT部門が利用実態を把握できていないため、「知らなかった」では済まされない法的責任を問われることになりかねないのです。
リスク4:ITガバナンスの崩壊と管理コストの増大
シャドーITの蔓延は、企業全体のIT利用を統制し、最適化する「ITガバナンス」を崩壊させます。
各部門がバラバラにツールを導入・利用することで、情報システム部門は社内のIT資産を正確に把握できなくなり、一貫性のあるセキュリティポリシーの適用や、ITインフラの計画的な管理が困難になります。
さらに、部門ごとに類似のサービスを重複して契約することで無駄なコストが発生したり、シャドーITが原因で発生したトラブルの対応に多大な工数がかかったりと、結果的に見えない管理コストが増大していくことになります。
リスク5:重要な業務データの消失
従業員が個人で契約しているクラウドサービスに重要な業務データを保存していた場合、その従業員が退職すると、データにアクセスできなくなり、業務が引き継げなくなるというリスクがあります。
サービスのパスワードが分からなくなったり、アカウントが突然削除されたりすれば、長年蓄積してきたノウハウや顧客とのやり取りといった貴重な情報資産が一瞬にして失われてしまいます。これは、企業にとって計り知れない損失です。
会社の公式な管理下にないデータは、常に消失のリスクと隣り合わせであることを認識しなければなりません。
シャドーIT対策の第一歩!自社に潜むリスクを可視化する3ステップ
効果的なシャドーIT対策を行うためには、まず「敵」を知ることが不可欠です。つまり、自社にどのようなシャドーITが、どれくらい存在しているのか、その実態を正確に把握することから始めなければなりません。ここでは、リスクを可視化するための具体的な3つのステップを解説します。
ステップ1:現状把握|利用されているツール・サービスを洗い出す方法
最初のステップは、社内で実際に利用されているツールやサービスを徹底的に洗い出すことです。IT部門が把握している「公式ツール」以外に、どのような「非公式ツール」が使われているのかを明らかにします。
洗い出しには、以下のような技術的なアプローチが有効です。
- ネットワーク機器のログ分析: ファイアウォールやプロキシサーバーの通信ログを分析することで、社内ネットワークからどのような外部サービスにアクセスしているかを特定できます。これにより、IT部門が想定していなかったクラウドサービスの利用が判明することがあります。
- 専用ツールの導入: 後述するCASB(Cloud Access Security Broker)のようなシャドーIT検出機能を持つツールを導入すれば、より効率的かつ網羅的に利用状況を可視化することが可能です。
これらの技術的な方法と並行して、次のステップである従業員へのヒアリングも重要になります。
ステップ2:リスク評価|ツールごとの危険度を判断する具体的な基準とは
洗い出したツールやサービスを、次に「リスク」の観点から評価・分類します。すべてのシャドーITが同じレベルの危険性を持つわけではありません。ツールごとに危険度を判断し、対策の優先順位を付けることが重要です。
リスク評価は、以下のような基準で行うと良いでしょう。
評価項目 | 確認するポイント | リスク高と判断する例 |
|---|---|---|
扱う情報の機密度 | そのツールでどのような情報(顧客情報、個人情報、財務情報、開発情報など)が扱われているか? | 顧客の個人情報リストを扱っている |
サービスの信頼性 | 運営会社の信頼性、セキュリティ認証(ISO27001など)の取得状況はどうか? | 運営元が不明確な海外の無料サービス |
セキュリティ機能 | 多要素認証、アクセスログ管理、暗号化などのセキュリティ機能は備わっているか? | ID/パスワードのみでログイン可能 |
データ保管場所 | データは国内のデータセンターで保管されているか?海外の場合はその国の法規制はどうか? | データ保管場所が公開されていない |
アカウント管理 | 会社の管理者が従業員のアカウントを管理・停止できるか? | 個人単位での契約で、退職後も利用可能 |
これらの基準に基づき、各ツールを「高リスク」「中リスク」「低リスク」などに分類し、優先的に対策すべき対象を明確にします。
ステップ3:従業員へのアンケート・ヒアリングで実態を掴むコツ
技術的な調査だけでは、「なぜそのツールを使っているのか」という現場の背景まで知ることはできません。従業員へのアンケートやヒアリングを通じて、シャドーITの利用実態とその理由を深く掘り下げることが不可欠です。
ただし、一方的に「禁止されているツールを使っていませんか?」と尋問するような形では、従業員は正直に話してくれません。ヒアリングを成功させるためには、以下のコツを押さえましょう。
- 目的を明確に伝える: 「犯人探しが目的ではなく、業務の実態を理解し、より安全で便利なIT環境を一緒に作るために調査を行いたい」というポジティブなメッセージを伝えます。
- 匿名性を担保する: 正直な回答を得るために、アンケートは無記名にする、あるいは第三者機関を利用するなどの配慮が有効です。
- 現場の意見を尊重する: ヒアリングでは、まず従業員の意見に耳を傾け、「なぜそのツールが必要なのか」「公式ツールにどんな不満があるのか」といった本音を引き出すことに注力します。「禁止」から入るのではなく、「共感」から入ることが信頼関係を築く鍵となります。
これらのステップを通じて社内のシャドーITの実態を正確に把握することが、効果的な対策の確かな土台となるのです。
情報漏洩を未然に防ぐ!明日から実践できるシャドーITの具体的な対策5選
自社に潜むシャドーITの実態を把握したら、次はいよいよ具体的な対策を講じるフェーズです。対策は、ツール導入による「技術的対策」と、ルール作りや教育といった「組織的対策」の両輪で進めることが成功の鍵となります。
対策1:【技術的対策】ツール導入でシャドーITを検知・制御する
技術的なアプローチは、シャドーITを網羅的に検知し、リスクのある利用を制御するために非常に有効です。ここでは代表的な3つのソリューションを紹介します。
CASB(Cloud Access Security Broker)によるクラウド利用の可視化
CASB(キャスビー)は、従業員とクラウドサービスの間に立ち、アクセスを一元的に監視・制御するソリューションです。
- 可視化: 誰が、いつ、どのクラウドサービスを利用しているかを詳細に把握できます。これにより、IT部門が認識していなかったシャドーITを漏れなく洗い出すことが可能です。
- 制御: 「個人アカウントでのファイルアップロードは禁止」「機密情報が含まれるデータの送信をブロック」など、企業のセキュリティポリシーに基づいた柔軟なアクセスコントロールを実現します。
CASBは、クラウドサービスの利用が常態化している現代において、シャドーIT対策の中核を担う技術と言えるでしょう。
IDaaS(Identity as a Service)による認証情報の一元管理
IDaaS(アイダース)は、様々なクラウドサービスのIDとパスワードを統合的に管理するクラウド型の認証基盤です。
- シングルサインオン(SSO): 従業員は一度の認証で、許可された複数のサービスに安全にログインできます。利便性が向上し、パスワードの使い回しなどのリスクを低減します。
- アクセス制御: IT部門は、従業員の役職や部署に応じて、各サービスへのアクセス権限を一元的に管理・設定できます。退職者のアカウントを即座に無効化することも容易になり、不正アクセスを防ぎます。
IDaaSを導入することで、認証を起点としたITガバナンスを強化できます。
MDM/EMMによるモバイルデバイス管理の徹底
スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスからのシャドーIT利用を防ぐためには、MDM(Mobile Device Management)やEMM(Enterprise Mobility Management)が有効です。
- デバイス管理: 会社が支給したデバイス、あるいは許可した個人所有デバイス(BYOD)に対して、遠隔でのロックやデータ消去、セキュリティポリシーの強制適用などが可能になります。
- アプリケーション管理: 業務で利用を許可していないアプリケーションのインストールを禁止したり、許可されたアプリのみ利用できる状態にしたりすることができます。
これにより、モバイルデバイスからの情報漏洩リスクを大幅に低減できます。
対策2:【組織的対策】明確な利用ルールの策定と周知
ツール導入と並行して、組織的なルール作りも欠かせません。従業員が判断に迷わない、明確なガイドラインを策定し、それを徹底的に周知することが重要です。
利用を許可するツール・サービスのホワイトリスト作成
「原則禁止」というスタンスでは、現場の業務効率を著しく低下させてしまいます。そこで有効なのが「ホワイトリスト方式」です。
IT部門が安全性や利便性を評価した上で、業務での利用を公式に許可するツールやサービスのリストを作成し、公開します。「このリストにあるツールなら自由に使える」という明確な基準を示すことで、従業員は安心してツールを選定でき、シャドーITの発生を抑制できます。
ツール導入における申請・承認プロセスの整備と迅速化
現場が必要とするツールを、迅速かつ安全に導入できるプロセスを整備することも重要です。
- 申請フローの簡素化: 申請に必要な書類や手続きを見直し、可能な限りシンプルにします。
- 承認の迅速化: 誰がどのような基準で承認するのかを明確にし、滞留させない仕組みを作ります。
- 評価基準の明確化: セキュリティやコスト、サポート体制など、ツールを選定する際の評価基準を公開し、透明性を高めます。
現場のニーズにスピーディーに応える体制を整えることが、シャドーITの「抜け道」を探す動機を減らします。
対策3:従業員のセキュリティ意識を向上させる教育と啓蒙活動
どれだけ優れたツールやルールを導入しても、それを使う従業員の意識が低ければ効果は半減します。定期的なセキュリティ教育を通じて、全従業員のリテラシーを向上させることが不可欠です。
- シャドーITのリスク教育: なぜシャドーITが危険なのか、過去の事故事例などを交えて具体的に解説します。
- インシデント発生時の報告ルール: 万が一、情報漏洩などのインシデントを起こしてしまった場合に、隠さずに速やかにIT部門へ報告するよう徹底します。
- eラーニングや標的型攻撃メール訓練: 定期的に研修や訓練を実施し、知識の定着を図ります。
対策4:IT部門が主導する代替ツールの提供と利便性の追求
現場がシャドーITを利用する背景には、「公式ツールが使いにくい」という不満があります。IT部門は、現場のニーズを積極的にヒアリングし、利便性の高い代替ツールをプロアクティブに提供する姿勢が求められます。
例えば、ファイル共有のニーズが高い部署には、セキュリティを担保した使いやすいオンラインストレージを導入・推奨する、といった対応です。IT部門が「現場の業務効率化を支援するパートナー」となることで、従業員との信頼関係が生まれ、シャドーITの問題は自然と解決に向かいます。
対策5:定期的な利用状況のモニタリングと監査体制の構築
シャドーIT対策は、一度実施して終わりではありません。ビジネス環境の変化や新しいツールの登場に合わせて、継続的に見直していく必要があります。
CASBなどのツールを活用してクラウドサービスの利用状況を定期的にモニタリングし、新たなシャドーITが発生していないかを確認します。また、定期的な監査を通じて、策定したルールが形骸化せずに遵守されているかをチェックし、必要に応じてルールやプロセスを改善していくPDCAサイクルを回すことが重要です。
シャドーIT対策を成功に導くための重要ポイント
シャドーIT対策は、単なる技術やルールの導入だけでは成功しません。企業文化や組織のあり方にも関わる、複合的な取り組みです。ここでは、対策を成功に導くために特に重要な3つのポイントを解説します。
「禁止」だけでは逆効果!現場部門とのコミュニケーションが鍵
シャドーIT対策において、IT部門が最も陥りやすい罠が「禁止するだけ」のアプローチです。
ある企業の失敗談
A社のIT部門は、セキュリティリスクを懸念し、外部のクラウドサービス利用を全面的に禁止する通達を出しました。しかし、現場からは「これでは仕事にならない」と猛反発。結果として、従業員はIT部門の目をかいくぐり、さらに巧妙な手口でシャドーITを使い続けるようになりました。IT部門と現場の溝は深まり、かえってリスクの温床が広がってしまったのです。
この事例が示すように、一方的な禁止は、現場の生産性を下げるだけでなく、シャドーITをさらに地下に潜らせ、状況を悪化させるだけです。
重要なのは、現場部門との対話です。彼らがなぜシャドーITを使うのか、その背景にある業務上の課題やニーズに真摯に耳を傾けることから始めましょう。「セキュリティを守る」というIT部門のミッションと、「業務を効率化したい」という現場のミッション、その両方を満たす最適解を一緒に探していくパートナーシップこそが、成功への唯一の道です。
経営層を巻き込み、全社的なセキュリティ文化を醸成する
シャドーIT対策は、情報システム部門だけの課題ではありません。全社的な取り組みとして推進するためには、経営層の理解とコミットメントが不可欠です。
経営層には、シャドーITがもたらす事業リスク(情報漏洩による損害賠償、ブランドイメージの毀損など)を具体的に説明し、対策の重要性を認識してもらう必要があります。経営トップから「セキュリティは経営の最重要課題である」という明確なメッセージが発信されることで、従業員の意識も大きく変わります。
セキュリティを「コスト」ではなく「投資」と捉え、必要な予算や人員を確保するためにも、経営層を巻き込むことは極めて重要です。
【事例紹介】シャドーIT対策に成功した企業の取り組み
ここで、シャドーIT対策に成功した企業の架空事例を見てみましょう。
株式会社B社の成功事例
課題: テレワークの急速な普及に伴い、各部署で無許可のチャットツールやオンラインストレージの利用が蔓延。IT部門は利用実態を把握できず、セキュリティリスクが増大していた。
取り組み:
対話と実態調査: まずは「シャドーIT撲滅キャンペーン」ではなく「働きやすいIT環境を考える月間」と銘打ち、全従業員へアンケートを実施。利用ツールのヒアリングと合わせて、公式ツールへの不満点を徹底的に洗い出した。 パイロット導入とフィードバック: アンケート結果からニーズの高かった数種類のツール(チャット、Web会議)を候補として選定。希望部署でパイロット導入を行い、現場からのフィードバックを元に全社導入ツールを決定した。 「攻め」と「守り」のルール策定: 安全性が確認されたツール群をホワイトリスト化し、利用を積極的に推奨する「攻め」の姿勢を見せる一方、CASBを導入して機密情報のアップロードなど危険な操作をブロックする「守り」のガードレールを設けた。成果: 従業員の利便性を損なうことなく、シャドーITを大幅に削減。IT部門は社内のクラウド利用状況を正確に把握できるようになり、プロアクティブなガバナンスを実現した。現場からは「IT部門が相談しやすくなった」という声が上がるようになった。
B社の成功の鍵は、一方的な禁止ではなく、現場との対話を通じて利便性と安全性のバランスを取った点にあります。
まとめ:シャドーITのリスクを正しく理解し、安全と利便性を両立するIT環境を構築しよう
本記事では、シャドーITが発生する原因から、その深刻なリスク、そして明日から実践できる具体的な対策までを網羅的に解説してきました。便利さの裏に潜む脅威を理解し、適切な対策を講じることは、現代の企業にとって喫緊の課題です。
この記事で解説した「シャドーIT対策」の重要ポイントおさらいい
最後に、本記事の要点を振り返りましょう。
- シャドーITとは: IT部門の管理外で利用されるデバイスやサービスのこと。業務効率化を求める従業員の善意から発生することが多い。
- 重大なリスク: 情報漏洩、マルウェア感染、コンプライアンス違反、ITガバナンスの崩壊など、事業継続を脅かすリスクを内包している。
- 対策の第一歩は「可視化」: ネットワークログの分析や従業員へのヒアリングを通じて、まずは自社の利用実態を正確に把握することが重要。
- 対策は「技術」と「組織」の両輪で:
- 技術的対策: CASBやIDaaSなどのツールで利用状況を検知・制御する。
- 組織的対策: 明確なルール策定、迅速な申請プロセスの整備、従業員教育を徹底する。
- 成功の鍵は「対話」と「文化醸成」: 「禁止」ではなく、現場との対話を重視し、経営層も巻き込んで全社的なセキュリティ文化を育むことが不可欠。
情報システム担当者が今日から始めるべき最初の一歩
この記事を読んで、自社の状況に不安を感じた情報システム担当者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、悲観する必要はありません。
今日から始めるべき最初の一歩は、「自社のネットワークから、どのような外部クラウドサービスにアクセスが発生しているか、ログを確認してみる」ことです。
まずはファイアウォールやプロキシのログを眺めてみるだけでも、これまで全く認識していなかったサービスの利用が発覚するかもしれません。それが、シャドーITという「見えない脅威」との戦いの始まりであり、安全で生産性の高いIT環境を構築するための、最も確実な一歩となるはずです。
シャドーIT対策は、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。しかし、この記事で紹介したステップを着実に実行することで、必ず道は拓けます。
もし、自社だけでの対策に不安を感じたり、より専門的な知見が必要だと感じたりした場合は、外部の専門家に相談することも有効な選択肢です。
シャドーIT対策に関するご相談や、CASBをはじめとするセキュリティソリューションの導入にご興味がございましたら、お気軽に弊社の無料相談をご利用ください。貴社の状況に合わせた最適な対策をご提案いたします。
また、シャドーIT対策の具体的な進め方をまとめた資料もご用意しております。ぜひダウンロードしてご活用ください。


