
たった5分でわかるSASE入門!セキュリティとネットワークの課題をまとめて解決
目次[非表示]
SASEとは?テレワーク時代の情シス担当者を悩ませる課題を解決する新常識
テレワークやクラウド利用が当たり前になった今、情報システム担当者の皆様は、これまでにない複雑な課題に直面しているのではないでしょうか。
「社員から『VPNが遅い』『Web会議が途切れる』というクレームが絶えない…」 「便利なSaaSを導入したいのに、セキュリティ承認のプロセスが複雑で進まない…」 「拠点ごとにセキュリティ機器もポリシーもバラバラ。管理が煩雑で限界だ…」
もし、一つでも当てはまるなら、それは従来の「境界型セキュリティ」が現代の働き方に追いついていないサインかもしれません。この記事では、そんな情シス担当者の皆様が抱える課題をまとめて解決する新たな概念「SASE(サシー)」について、たった5分でご理解いただけるよう、わかりやすく解説します。
「境界型セキュリティ」はもう限界?あなたの会社はこんな課題を抱えていませんか?
かつては、社内ネットワークという「城」の内側を守り、外部からの脅威を「城壁」で防ぐ「境界型セキュリティ」が主流でした。しかし、働く場所や使うサービスが多様化した今、このモデルは様々な課題を生み出しています。
ケース1:テレワークで急増したVPN接続が遅い・切れる
テレワークの急増により、多くのトラフィックがデータセンターのVPNゲートウェイに集中。その結果、「VPNが遅くて業務にならない」「Web会議が頻繁に切断される」といった生産性を著しく下げる問題が発生しています。これは、社員の不満に直結する深刻な課題です。
ケース2:クラウドサービスの利用が増え、通信経路が複雑化している
Microsoft 365やSalesforceといったクラウドサービス(SaaS)の利用は、今や当たり前です。しかし、これらの通信も一度すべてデータセンターを経由させる従来の方式では、通信の遅延やネットワーク機器への負荷増大は避けられません。いわゆる「** trombone effect(トロンボーン効果)**」と呼ばれるこの非効率な通信経路は、ユーザー体験を損なう大きな原因となっています。
ケース3:拠点ごとにセキュリティポリシーがバラバラで管理が煩雑
本社、支社、工場、店舗など、拠点ごとに異なるセキュリティ機器を導入・運用していませんか?ポリシーの統一が難しく、アップデートやメンテナンスのたびに膨大な工数がかかっていませんか?このような状態では、セキュリティレベルに抜け漏れが生まれるリスクも高まります。
この記事でわかること:5分でSASEの基本とメリットを完全理解
この記事を読めば、なぜ今SASEが必要とされているのか、その基本的な仕組みから、導入することで得られる具体的なメリットまで、網羅的に理解できます。複雑に見えるネットワークとセキュリティの世界をシンプルに整理し、次世代のITインフラへの第一歩を踏み出すための知識を手に入れましょう。
SASE(サシー)とは?わかりやすく基本を解説
それでは、本題である「SASE」とは何かを具体的に見ていきましょう。少し専門的に聞こえるかもしれませんが、その概念は非常にシンプルです。
SASEを一言でいうと「ネットワークとセキュリティ機能をクラウドで提供する」仕組み
SASEは「Secure Access Service Edge」の略で、「サシー」と読みます。
従来、企業はデータセンターや各拠点に、ファイアウォールやVPN機器といった物理的な箱(アプライアンス)を設置して、ネットワークとセキュリティを管理していました。
それに対してSASEは、これまで物理的な機器が担ってきたネットワーク機能(SD-WANなど)とセキュリティ機能(SWG, CASB, ZTNAなど)を、すべてクラウド上でまとめて提供するサービスモデルです。
これにより、ユーザーは場所やデバイスを問わず、常に安全で快適なネットワークアクセスが可能になります。まるで、ネットワークとセキュリティの機能を「水道」や「電気」のように、必要な時に必要なだけ利用できるイメージです。
なぜ今SASEが必要?ガートナーが提唱した背景にある"働き方の変化"とは
SASEという概念は、米国の調査会社であるガートナーによって2019年に提唱されました。その背景には、私たちの「働き方」の劇的な変化があります。
背景1:テレワークの常態化とセキュリティリスクの増大
コロナ禍を経て、テレワークは一時的なものではなく、多くの企業にとって標準的な働き方の一つとなりました。自宅やカフェ、コワーキングスペースなど、社外のネットワークから社内リソースやクラウドサービスへアクセスする機会が爆発的に増加。これにより、従来の「社内は安全、社外は危険」という境界防御モデルでは守りきれない、新たなセキュリティリスクが生まれています。
背景2:クラウドサービス(SaaS)利用拡大によるトラフィックの変化
企業のクラウドサービス利用は年々増加しています。総務省の調査でも、その傾向は明らかです。
クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は 75.0%(前年 72.3%)と、前年と比較して 2.7 ポイント上昇しており、上昇傾向が続いている。
このように、業務で利用するアプリケーションやデータが社内(データセンター)から社外(クラウド)へ移行したことで、通信トラフィックの流れも大きく変化しました。もはや、すべての通信をデータセンターに集約させる必要性は薄れ、むしろ非効率を生む原因となっています。
従来のセキュリティモデル(境界防御モデル)との根本的な違い
SASEと従来の境界防御モデルの最も大きな違いは、守るべき対象の考え方です。
境界防御モデル | SASE (ゼロトラストモデル) | |
|---|---|---|
考え方 | 「社内は安全、社外は危険」 | 「すべてを信頼しない(Never Trust, Always Verify)」 |
守る対象 | ネットワークの「境界」 | ユーザー、デバイス、データなどの「リソース」 |
アクセス制御 | ネットワークへのアクセス可否で判断 | リソースへのアクセスごとに毎回認証・認可 |
主な構成 | データセンター中心 | クラウド中心 |
境界防御モデルが「場所」を信頼の基準にしていたのに対し、SASEは「なにも信頼しない」ことを前提とするゼロトラストの考え方に基づいています。ユーザーが誰で、どのデバイスから、どのデータにアクセスしようとしているのかを毎回検証することで、たとえ社内ネットワークからのアクセスであっても安全性を確保します。
SASE導入がもたらす4つの絶大なメリット|情シス担当者と利用者の双方に恩恵
SASEを導入することは、単にセキュリティが強固になるだけではありません。情報システム担当者と、実際にシステムを利用する社員の双方にとって、大きなメリットをもたらします。
メリット1:ゼロトラストに基づいた強固なセキュリティの実現
SASEはゼロトラストセキュリティを中核に据えています。これにより、社内外を問わず、すべてのアクセス要求を検証し、最小権限の法則に基づいてアクセスを許可します。万が一、マルウェアに感染した端末が出ても、被害を最小限に食い止めることが可能です。場所やネットワークに依存しない、人・モノ中心のセキュリティを実現します。
メリット2:運用管理の簡素化と情シス担当者の工数削減
これまで拠点ごとにバラバラに管理していたネットワーク機器やセキュリティポリシーを、クラウド上の単一の管理画面から一元的に管理できるようになります。ポリシーの変更や追加も迅速かつ容易に行えるため、運用管理にかかる工数を大幅に削減。情シス担当者は、より戦略的な業務に集中できるようになります。
メリット3:脱VPN!通信の最適化によるユーザー体験の向上
SASEは、ユーザーに最も近いアクセスポイント(エッジ)で通信を処理します。クラウドサービスへのアクセスはデータセンターを経由せず、直接インターネットへ抜ける(ローカルブレイクアウト)ため、通信の遅延が劇的に改善されます。これにより、「VPNが遅い」といったストレスから解放され、Web会議や大容量ファイルのダウンロードも快適になり、全社の生産性向上に貢献します。
メリット4:拠点ごとの機器が不要に?インフラコストの削減
各拠点に設置していた高価なファイアウォールやVPN専用機などが不要になるため、ハードウェアの購入費用や保守・運用にかかるコストを削減できます。サービスモデルであるため、初期投資を抑えつつ、企業の成長に合わせて柔軟に拡張できる点も大きなメリットです。
SASEを構成する主要な機能とは?難しい用語もわかりやすく解説
SASEは、単一の製品ではなく、複数の機能を統合したソリューションです。ここでは、その中核をなす主要な機能について、わかりやすく解説します。
ネットワーク機能の中核を担う「SD-WAN」
SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)は、ソフトウェアによって仮想的なネットワークを構築・管理する技術です。トラフィックの種類(例えば、Web会議の通信は重要、単なるWeb閲覧はそれなり、など)を識別し、それぞれの通信に最適な回線(インターネット回線、閉域網など)を自動的に割り振ることができます。これにより、通信品質の安定化と回線コストの最適化を両立します。
セキュリティ機能の代表例
SASEには、ゼロトラストを実現するための様々なセキュリティ機能が統合されています。
SWG(セキュアウェブゲートウェイ):危険なWebアクセスをブロック
ユーザーがインターネット上のWebサイトにアクセスする際に、その通信を中継し、マルウェア感染の恐れがある危険なサイトへのアクセスをブロックしたり、URLフィルタリングを行ったりします。社内外どこからのアクセスでも、一貫したWebセキュリティポリシーを適用できます。
CASB(キャスビー):クラウドサービスの利用状況を可視化・制御
「Cloud Access Security Broker」の略。社員がどのクラウドサービスをどのように利用しているかを可視化し、制御する機能です。未許可のサービス利用(シャドーIT)を検知したり、機密情報がクラウドストレージにアップロードされるのを防いだりできます。
ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス):ユーザ単位で安全なアクセスを提供
従来のVPNに代わる次世代のリモートアクセス技術です。VPNが一度接続すると社内ネットワーク全体にアクセスできてしまうのに対し、ZTNAはユーザーとデバイスを認証した上で、「許可された特定のアプリケーション」にのみアクセスを許可します。これにより、万が一不正アクセスが発生しても被害範囲を限定できます。
FWaaS(ファイアウォールアズアサービス):クラウド上でファイアウォール機能を提供
従来、物理的な機器として提供されてきたファイアウォール機能をクラウドサービスとして提供するものです。これにより、データセンターだけでなく、各拠点やテレワーク環境など、すべてのトラフィックに対して一元的なファイアウォールポリシーを適用できます。
失敗しないSASE導入のための2つのステップ
SASEのメリットは大きいですが、やみくもに導入しては失敗しかねません。成功のためには、段階的なアプローチが重要です。
ステップ1:現状の課題と理想のネットワーク環境を整理する
まずは、自社が抱える課題を明確にしましょう。
- 現状の課題: VPNのパフォーマンス、セキュリティ管理の煩雑さ、通信コスト、ユーザーからの不満など、具体的にリストアップします。
- 理想の環境: 「どこからでも安全かつ快適に業務ができる」「セキュリティポリシーが統一されている」「運用工数が削減されている」など、SASE導入によって実現したい将来像を描きます。
この整理を通じて、自社にとってどのSASE機能が優先的に必要かが見えてきます。
ステップ2:スモールスタートも可能!自社に合った製品・サービスを選ぶポイント
SASEは、すべての機能を一度に導入する必要はありません。例えば、「まずはテレワーク環境の改善のためにZTNAから導入する」「危険なWebアクセス対策としてSWGから始める」といったスモールスタートが可能です。
自社に合った製品・サービスを選ぶ際には、以下のポイントを確認しましょう。
ポイント1:必要な機能が網羅されているか
ステップ1で整理した課題を解決するために必要な機能(SD-WAN, SWG, ZTNAなど)が、検討しているサービスに十分に備わっているかを確認します。将来的な拡張性も考慮に入れると良いでしょう。
ポイント2:既存システムとの連携はスムーズか
現在利用しているID管理システム(Azure ADなど)や他のセキュリティ製品とスムーズに連携できるかは、運用負荷を大きく左右する重要なポイントです。
ポイント3:サポート体制は充実しているか
SASEは企業のITインフラの根幹を担います。導入時だけでなく、導入後の運用フェーズにおいても、万が一のトラブル時に迅速に対応してくれる手厚いサポート体制があるベンダーを選ぶことが安心に繋がります。
まとめ:
SASEで次世代のITインフラへの第一歩を踏み出そう
この記事では、テレワーク時代の新たな常識となりつつある「SASE」について、その基本からメリット、主要機能、導入のステップまでを解説してきました。
おさらい:「SASEとは」ネットワークとセキュリティの課題をまとめて解決するソリューション
SASEは、クラウド上でネットワーク機能とセキュリティ機能を統合して提供するサービスモデルです。導入することで、セキュリティの強化、運用管理の簡素化、ユーザー体験の向上、そしてコスト削減といった多くのメリットを享受できます。
働き方が多様化し、ビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において、柔軟性と拡張性に優れたSASEは、企業の成長を支える強力なITインフラ基盤となるでしょう。
まずは情報収集から!SASE導入に関するご相談や資料請求はこちら
「自社の課題がSASEで解決できるか、もっと具体的に知りたい」 「どの製品が自社に合っているのか、専門家の意見を聞きたい」
そうお考えの情報システム担当者様は、まずはお気軽に情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。SASE導入に関するご相談や、より詳しい製品資料のご請求など、お客様の状況に合わせたご提案をさせていただきます。下記よりお気軽にお問い合わせください。


